ゆーあ

リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様のゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

すごく楽しかった!

『テニスの王子様』はおろか、テニスのルールすらほとんど知らない状態で、友達に誘われて公開2日目に観に行きました。この友人も特にテニプリのファンというわけではなく、純粋に面白そうという理由で声をかけられたため、特に事前知識を得るチャンスもなく…。しかしこの「ほとんど知らない」という状態がむしろ功を奏し、大概のことを「こういうものなのかな」と受け入れ無垢に楽しむことができました。

オープニング。開幕と同時に激しく踊りだす青学テニス部員たち。のっけからのスピード感に驚かされたけど、そういえばテニミュっていうのがあるな!テニプリ作品において、歌って踊るのは当然なんだな!と納得。郷に入らば郷に従う、これが映画鑑賞のルールです。

本編のストーリーは、学校の長期休みにアメリカに武者修行に行ったリョーマが、偶然現地に家族旅行に来ていたヒロインの桜乃ちゃんをテニスギャングたちから救い出すくだりから始まります。裏路地でテニスギャングとラップバトルをするリョーマ。ミュージカルやキャラソンがたくさん出ていることから意外ではなかったですが、リョーマはラップも上手いんだねえ!テニスとラップ、両スキルでギャングたちを圧倒するリョーマ。その時、通りすがりの謎の人物が放ったボールとリョーマのボールが接触したことで周囲の時空が歪み、リョーマと桜乃は過去にタイムスリップしてしまいました。
転送された時代が、父・南次郎が現役プレーヤーとして活躍している頃だと気づいたリョーマは、桜乃ちゃんを連れてかつての我が家に向かいます。未来の息子とは知らず彼らを受け入れる南次郎。タイムスリップものに共通する鉄の掟に「過去の自分に会わない」というものがありますが、秒速で破るリョーマ、というかテニプリ、やはりレベルが違いますね。ノーラン監督のコメントが欲しいです。
そしてその夜、桜乃ちゃんがマフィアに誘拐されてしまいます!犯人の目的は脅迫によって南次郎に八百長試合を強制し、全米オープンでの勝利を阻止すること。それが父の引退理由だと知ったリョーマは、桜乃ちゃんを救い出し、試合当日まで二人で逃げ切ることを決意します。

ということで、ストーリーと登場人物の行動は完全に一本筋が通っているので、とても分かりやすくよく出来ていました。まあ筋の源流が狂ってると言えばそうなんだけども…。

しかしテニプリはもっとずっと破天荒だと思っていたので、テニスの試合も物理法則をゆがめるような技などはほとんどなく、普通にプレーしていたことに逆に驚きました。敵ながら互いを認め合うライバル的存在の女性が、脚にラケットを括り付けて蹴りでラリーをしていたけど、確かに腕力より脚力の方が強いし、パラリンピックとかだとこういう競技もあるのかな?とか自然に受け入れてた。

そして想像していたテニプリイメージと大きく異なりながら、すごくよかったのが、リョーマと桜乃ちゃんのラブ要素が多いこと!桜乃ちゃんが捕まるたびに、命がけで助け、守ってくれるリョーマ。クールぶった生意気な少年だと思っていたけど、こんなに男らしくてカッコいいなんて!極めつけは、マフィアに追われて逃げ込んだ無人の教会でのシーン。マフィアに髪を切られた桜乃ちゃんにリボンを渡すリョーマ。それでポニーテールを作った彼女の可愛い姿にドキッ…からのロマンチックデュエットに突入!星空のなか歌い踊る二人に、「こ、これはまさかもしかして告白とかしちゃう感じなのか…!なのか…?!」とまるで中学生のようにキャーキャーしてしまいました(笑)

そんな感じで物語は順調に進行しますが、そこはテニプリ。やはり度肝を抜くようなネタを入れてきている…それが

任意の番号にかけると、未来の跡部様の寝起きセクシーミュージカルが聞ける公衆電話

経緯の詳細は省きますが、純白のローブから胸元をはだけさせ、寝起きのけだるさをメロディーに乗せる跡部様。寝起きでも見事な声量、さすがにございます。つられて歌いながら状況を説明するリョーマ。おおまか把握した跡部様は、ローブをバッと脱ぎ捨てて…ここで思わずキャーッと顔を覆ってしまいましたが、その下に着ていたのは、なんと氷帝のユニフォーム!(というか早着替え) そしてテニスコート(概念)で対峙するリョーマに、逃げた先で得たものなど価値がない諭します。
映像が混迷を極めているのでアレですが、ここの跡部様は本当に素晴らしいんですよ。まるで冗談のようなリョーマの現状を信じ、その実力を信じ、自分なりのアドバイスを与える。実際リョーマは、そのアドバイスによって、マフィアから逃げずに立ち向かう道を選びます。相手を全身で受け止めて、誠意を込めて返す。満ち満ちた自信がなせるその態度から、跡部様はやはり帝王と呼ぶにふさわしい器だと実感しました。

ところでこの『リョーマ!~』には『Glory』と『Decide』 の2バージョンがあり、私が見たのは前者だったのですが、恐らくこの公衆電話がつながる相手(ゲストキャラ)が異なるんですね。しかしあの跡部様に引けを取らないネタが他にある?だとしたら本当に恐ろしいコンテンツだよテニプリ…。

約100分の上映時間に色々な驚きとトキメキが詰まっていて、終わり方もすがすがしく、原作を知らなくても本当に楽しい「テニプリ体験」ができました。私が観たのは確かにアニメ映画でしたが、結果的にものすごく「テニミュ」が観てみたくなった!!各校のテーマソングにあわせてコール&レスポンスをしたり、なんかエンターテインメントとしてとびきり楽しそうだなって。昔から一大ジャンルとして存在しているのを知りながら関わる機会が無かった文化の、光る片鱗に触れられたことが、この作品を観て一番良かったことです。
ゆーあ

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