ゆーあ

HiGH&LOW THE WORSTのゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

HiGH&LOW THE WORST(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

お、お、お、おもしろいいいいい!!!!!

全日のこと、鳳仙のこと、そして村山さんのこと…語りたいことは山ほどあるのですが、まず何より、アクションが歴代一おもしろい!!!
俳優とスタントマンの卓越した身体能力と匠のカメラワークで、他の邦画では見たことないアクションシーンを創ってきたハイローが、なおも自己ベストを更新するとは!
まず冒頭の村山vs轟!積み上げられた椅子や机をぬって間合いを測り、オーディエンスの股をくぐって奇襲をかける。実際は誰も手出しをしていないのに、乱闘に見えるタイマンって新しい!またタイマンは1対1の拳のぶつかり合いなので、どうしてもメッセージ性が強くなりがちだけど、目くるめくカラフルな視界と感性で、エンターテインメントに昇華させているネクストレベルの演出。対戦カードの豪華さ的にも、オープニングにふさわしい!鬼邪高スピンオフというからには、やっぱりこの2人のタイマンが見たかったので、期待に応えてくれて嬉しかったです。負ける予感は微塵もなくても、手加減はせずトドメまで容赦しない村山さんは本当に格好いい。轟を、自分の地位に上がってこれる器だと認めている。熱いっす!これは激熱っすよ!(ジャム男)
そして本作で私が最も好きなアクションシーンは、クライマックスの絶望団地攻城戦!誰が呼んだか言い得て妙な「攻城戦」。ただ敵を殴って蹴散らすだけでなく、各自が戦況を把握し役割分担をして、本拠地に攻め入る突破口を作る。俺、喧嘩以外の脚立の使い道、初めて知ったよ(喧嘩です)。これまでハイローシリーズで様々な乱闘をみてきて、素人の想像力で勝手に出尽くしたと思っていたけど「これがあったかー!!」と唸りました。ここでのマイベストカメラワークは、紙吹雪が舞い樽?を落したのを合図に急激にぐっっと上昇する俯瞰図!目が覚めるように気持ち良い。さて私はもともと複数階建ての建物を戦場とするダンジョンバトルが好きなのですが、大将を本丸に行かせんとする仲間の奮闘が熱いんですよね!楓士雄が敵に取り囲まれたところを仁川が助けに入ってその場を預かったり、小田島の「まいど~殺しの鳳仙だす。や~っておしまい」などなど! ヤンキー映画における「ここは俺がやる。大将のお前は先に行け」の伝説的シーンといえば、『クローズゼロ2』の多摩夫VS漆原ですが(私調べ)、ザワでは「その」鳳仙が突破口を切り開いてくれるんだから…たまらない!!
上田佐智雄を筆頭に鳳仙は、この映画が初登場とは思えないほどキャラが立っていました。彼らについては鳳仙学園という確立された土台に支えられていますが、他の新キャラも「全員主役」の存在感を放っていました。なんといっても楓士雄。彼は完全にクローズのキャラクターというか、少なくともハイローの住人ではありません。底抜けに明るい性格もそうですが、家族や生い立ちから得た価値観などのバックグラウンドがとてもしっかりしていて、ハイロー特有の「ふわふわした設定から勝手に妄想する」余白があまりない。またハイローとクローズでは倫理観も微妙に異なっていて、楓士雄が自転車をパクるシーンはその象徴だと思います。そんな楓士雄が主人公として物語をひっぱっているので、『HiGH&LOW THE WORST』の展開や演出は100%クローズのそれ。けれど根幹がハイローなので、この作品は疑いようもなくHiGH&LOWユニバースの所属なのです。この絶妙なバランスは、すべてのクロスオーバー作品の模範になる出来だと思います。

快活で自然と人を惹きつけ、外から来たにも関わらずいつの間にか皆をまとめ上げる天性のカリスマ的主人公。そんな新キャラがシリーズの主役を張ると、不安になるのは既存キャラの扱いですが、抜きんでた実力が強調されることで轟の格が落ちることなく安心しました。また楓士雄の人たらしの才能を、轟が羨ましがって葛藤したりしなかったのも良かったです。というのも、村山さんは頭を「ボスではなくリーダー」だと定義しましたが、轟は別に皆を率いるリーダーになりたいわけではない。村山さんもそれを知っているけど、自分自身の経験から、強さだけでは足りないことを遠回しに気づかせようとする。中中一派を傘下に入れた楓士雄を指して「お前にないものを、あいつは持ってるよ」と言ったのもその一つ。その轟の成長課題が、楓士雄と共闘することで自然に解決される展開は上手いなと唸りました。楓士雄は轟の強さを頼り助けを求め、轟はそれに応えて「鬼邪高校のために」闘う。皆に慕われる最強の村山さんにはまだ遠いけど、正反対の性格の二人が力を合わせれば、なんとかSWORDのOの看板を支えられそうだ。ラストで、佐智雄に負けた楓士雄のそばに轟がしゃがみこみ、デコピンをしたあと肩を背負う図は、その象徴に見えました。村山さんの想いはちゃんと受け継がれている。このあとどちらが先に「一人前の頭になるか」のワクワクも含めて、SWORD第二世代の成長を描く物語としては、最高の仕上がりでした。

そして村山さん!!

いうまでもなく、彼こそシリーズを通して最も顕著に成長が描かれていたキャラクターです。己一人の強さだけを振りかざしていたドラマS1、仲間の大切さを知ったS2、背中を追う仲間と共に闘ったTHE MOVIE、鬼邪高校を守るため他チームとの協定を促進したEOS…その頭が次世代にバトンを渡すとき、どのような姿を見せるのか。これは非常に慎重に扱うべき、刺激的な題材です。そしてその結果は、とても満足のいくものでした!この映画において、村山さんは大人と子供の両面を見せます。鬼邪高校の頭として全日を導く姿と、バイト先で「大人の世界」に揉まれる姿。見慣れた前者に対し、後者ではその価値観が社会にまっすぐ通用しない場面も描かれます。しかし、巧みなことにそれが全く格好悪くない。関ちゃんの父親やパルコのように、大人になることそれ自体は格好悪いことではなく、むしろ今よりもっと格好良くもなれる。本作の中で村山さんは自身の悩みや葛藤を明言せず、またそれにどんな答えを出したのかもはっきりとは描かれませんが、きっと格好いい大人になるんだろうな、という確信を私たちに与えてくれます。そういう去り際がもう既に、格好いいんだ!!
こうした村山さんの成長は、ひとえにその役を演じる山田裕貴さん、そして彼を支える関ちゃん(一之瀬ワタルさん)、古屋くん(鈴木貴之さん)の功績によるものです。もともとかませ役としてドラマ単発で終わるはずだったところが、SWORDの一角として渡り合い、ついにはスピンオフ映画まで成り上がった。このメタ的にも大きな成長は、彼らがキャラクターの人生を創り、真剣に生きてくれたおかげです。だからこそ、校門の前で礼をする3人に、スクリーンのこちら側の自分も、紙吹雪を撒いて心からお礼を叫びたかったです。

HiGH&LOWとクローズというビッグタイトルの競宴、第二世代の全日、育った街と人に結びつく絆、そして定時三人の卒業―取り扱うべき特濃のテーマが沢山あるのに、その全てを描き切った『HiGH&LOW THE WORST』の満腹感、半端じゃない!ストーリーのベースがTHE MOVIEと近いだけに、シリーズがいかにブラッシュアップされたかも明確に実感できます。1つのチームの区切りを描くと同時に、シリーズ全体のコマを先に進める、本当に素晴らしい映画でした。
ゆーあ

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