わさび

ある神父の希望と絶望の7日間のわさびのレビュー・感想・評価

4.2
聖職者を恨む何者かから、"一週間後に殺す"と宣告されたアイルランドのとある神父。彼はそれからの一週間、教区の人々の許を訪ねて歩く。悩める人、迷える人、信仰を持たない人、病気の人、罪を犯した人……。彼らの話を聞き、自分や教会の存在意義を自らに問いかける神父。そして、一週間後。果たして彼の身に何が起きるのか?

なかなか優れた物語だった。
舞台はカトリックの国アイルランドの、片田舎の小さな町。ブレンダン・グリーソン演じる神父は人々の尊敬を集めているかに思えたが、その裏で、町の住人の信仰心は薄れる一方であり、(主にカトリックに於ける)罪を犯す人が蔓延り、教会は危機に瀕する。
神の存在を信じるとは、一体どういう事なのか。
罪を赦すとは、一体どういう事なのか?
神父と町の人々との対話の中で様々な人間模様を描きながら、こうした難問を真っ向から観客に問いかける本作。
私は信仰を持たない人間だが、宗教は取りも直さず人類の歴史そのものであり、我々人間の心の大いなる拠り所である筈のものだと思っているので、他人事と思わずに大変興味深く事のなりゆきを見守った。

本作ではグリーソン親子の共演が観られるほか、実力派アイリッシュ俳優が続々と登場する上(個人的にはクリス・オダウドが益々好きになった)、アイルランドの地方の雄大な自然も堪能出来る。先述の通り内容もなかなかよろしいので、アイルランド映画好きには是非お勧めしたい作品である。
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