茜

ハッピーボイス・キラーの茜のレビュー・感想・評価

ハッピーボイス・キラー(2014年製作の映画)
3.8
コミカルスリラーって書いてあったけど、私には全然コミカルに見えなかったよー…。

序盤こそポップな雰囲気だったけど、主人公のジェリーが同僚を殺害するシーンで凄くゾッとして、そこから全く笑えなかった。
その後に遺体をバラして几帳面にタッパーに詰めて積み重ねるところとか、ほんと笑えない。
ジェリーの抱えてる闇が深すぎて、ペットの犬と猫と会話が出来るという夢みたいなシーンですら見てて気持ちがどんよりした。

仕事で統合失調症の人と接する機会が以前に何度かあったけど、あの人達もこんな感じで幻聴が聞こえてたんだろうか。
ジェリーは現実では孤独な寂しい人で、でも妄想の世界では幻聴でペット達や好きな女性の生首と楽しく会話する事が出来る。
病気を治すための薬を飲むと、幻聴が聞こえなくなって孤独な現実を突きつけられるから、自ら薬を捨てるシーンとか見てて寂しくなった。
エンディングも皆揃って楽しげだけど、それすらもジェリーの妄想なんじゃないかと思ってしまう。

題材は重たいんだけど、それをそのまま深刻なタッチで映像にするんじゃなくて、監督独自のポップな世界観で描いているのが個性的。
ジェリーが働くバスタブ工場のピンク基調のロゴやテープとか、エンディングの登場人物皆で歌うシーンとか、随所でカラフルな色使いが目に付く。
ライアン・レイノルズの狂気と寂しさの入り混じった演技も、思わずジェリーに同情してしまいそうになる。
考えさせられるような内容とユニークな演出の絶妙なマッチングが面白い映画だった。
茜