ゆーあ

ドクター・ストレンジのゆーあのレビュー・感想・評価

ドクター・ストレンジ(2016年製作の映画)
4.0
MCUがお届けする新次元の映像体験!

予告から『インセプション』のように現実が歪み、美しく拡張する魔法表現に惹かれ、めったに選ばない3Dで鑑賞しました。

結論、これは3Dで観る価値大・大・大です!

古今東西様々な作品で魔法が描かれてきたけど、こんな表現見たことにない!都会のビル群が入れ子細工のように躍動し、万華鏡のように折り重なって無限の奥まで展開する。ひっくり返った天地左右は決して幻術ではなく、窓ガラスの上を走り抜ける間、さっきまで洋館の床に立っていた者は重力に従って砂漠の果てに滑り落される。現実風景が生命体のように幾何学的な模様に変身していくさまはとても芸術的で、まるでエッシャーの作品のよう。杖や靴などのマジカルアイテムを駆使した格闘アクションも燃えるのだけど、それよりも口を開けてひたすら背景を凝視しちゃう戦闘シーンは初めてかも。

この作品における「魔法」とは、科学や医学と同じく「世界の仕組みを知ることで、それを操り影響を及ぼす力」なので、確かに「ファンタジー」とはカテゴライズできない現実味があった。この「現代技術では非現実的なのだけど、でもNYのどこかに行けばもしかして見られるのかも?」と思わせちゃうワクワク感は正しくMCU作品全てに共通するもので、その点で間違いなく『ドクター・ストレンジ』はMCUの新たな一員だった。彼がこれから他のメンバーと共闘したら、どんな映像になっちゃうんだろう?!

とはいえ今作はあくまで「ドクター・ストレンジのオリジン」なので、ストーリーはあっさりめ。他のMCUキャラクターとはほとんど絡まないし、話題も出てこないので、過去作品を一切観ていなくても楽しめます。「MCUってどれから見ればいいんだよ…めんどくせえ」と思っている人も、まったく気にせず観に行ってOKです。

さてこの『ドクター・ストレンジ』は今をときめくベネちゃんが主演という点でも話題になりましたが、不遜な天才というキャラクターはさすがピッタリはまってました。そして何よりティルダ様!!深い慈愛のオーラをまといながら畏怖すべき謎に満ちた姿と言動は、ひれ伏して教えを請いたくなる説得力!魔法を繰る手の振り付け1つ1つに意味があるようで、そんな彼女がNYの空に描くバトルフィールドは教会のモザイク画のように美しく、燃える戦いに華を添えていました。

ただ映画的にはそのシーンがクライマックスで、香港の最終決戦はやや盛り上がりに欠けたかも。決着も、自己犠牲と見ればストレンジの成長を描ききったように思えるけど、コクがないように感じた。でも先述の通り今作は「オリジン」なので、この戦いが今後にどう影響を及ぼすか、その時誰が参戦するか、その広がりを期待するのもMCUの醍醐味かと!

感想の冒頭に「3Dで観る価値大」と書きましたが、それはエンディング映像でも真価を発揮します。豪奢な金細工の万華鏡を思わせる映像は、3Dだとよりいっそう目眩めくトリップ感を得られます。『NY心霊捜査官』も然り、スコット・デリクソン監督のエンディングは本当に素晴らしい!!
ゆーあ

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