茜

サンバの茜のレビュー・感想・評価

サンバ(2014年製作の映画)
3.3
移民問題という深刻なテーマを扱いつつ、物語自体は軽快でコミカルに進んで行くため、重たさを感じず気楽に観ることが出来る。

皿洗いとして働きつつ、もう少しで料理人になるという夢を掴みかけていたものの、ビザの更新を忘れていたために国外退去を命じられてしまうサンバ。
元キャリアウーマンで女性管理職としてバリバリに働いていたものの、燃え尽き症候群により現在休職中、今は移民ボランティアで活動しているアリス。
この二人が出会う事によって巻き起こる様々な人間模様や恋愛模様が、笑いを交えて温かく描かれている。

あやふやな世界で形見を狭くしながら必死に生きるサンバと、仕事に疲れて人生に疲れて生きる意味を見失いそうなアリスは、ある意味全く正反対な二人。
だけどこの二人が出会い、時に笑い合ったりぶつかり合ったりしながら互いの距離を縮めていくことで、化学反応のように二人が成長して前を向いていく姿は観ていてほのぼのとした気持ちになれた。

移民問題というテーマは、正直まだまだ自分にとってはあまりリアリティのない言葉だけど、終盤でサンバがこぼす「自分の名前が何なのか忘れそうになる」という言葉は不思議と重たく突き刺さるようだった。
生まれた国や肌の色、言葉や境遇など、全く異なる人間同士でも、手を取り分かりあって生きて行こうというメッセージが込められているような、ほんわか優しい気持ちになれる映画。
茜