B5版

草原の実験のB5版のレビュー・感想・評価

草原の実験(2014年製作の映画)
3.3
ここでは名前もわからぬ人物が唐突に現れ、そして消えていく。誰の言葉すら聞こえない。
誰かの夢の中を彷徨っているかの様な錯覚に陥る映画。

雄大な、しかし代わり映えのしない草原の風景の隅では淡々と何かが推し進められている。一見脈絡のない映像、しかし嫌な予感の片鱗は着々と重なり、最後に突然の結果だけが残る。
無慈悲な結果の前では、雄々しい動物の群れも初々しい男女の目配せも素朴な家もなにもかも、全部が同じ質量の存在に過ぎなくなる。
牧歌的な御伽噺のような調子の中で、国家への脅威だけはくっきりと現実を反映していた。これをロシア映画として世に出した監督の、作品に込めた並々ならぬ想いを感じた。
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