わたがし

レインツリーの国のわたがしのレビュー・感想・評価

レインツリーの国(2015年製作の映画)
5.0
 なかなか難しくて危ういテーマを題材にしながらもちゃんと誠実に作られていて、そういった意味での違和感もほとんどないとても良質な映画で予想以上に感動してしまった。
 ネットで出会った二人が距離を少しずつ縮めていくくだりから主人公がちゃんと痛くてカッコ悪くて親近感の持てるキャラクター(うざいなあ…と思いながらも共感してしまう)に思えるし、だからこそ終わりまでちゃんと「自分の物語」として引き寄せながら観ることができる。テキストで会話する独特の歯がゆさ、こそばゆい感じももちゃんと丁寧に描かれていて、驚くような斬新な工夫はないにせよ、ちゃんと描きべき要素はちゃんと描かれている。物凄くドラマに引き込まれる。
 主人公ふたりの演技もとても繊細で上手くて、脇を固める俳優たちも一部を除いてほとんど上手くこの「やや偽善っぽい」世界観に溶け込んでいるという映画的美しさ。西内まりやは今後の見る目が変わるほどお芝居の存在感があるし、映画の後半の印象をガラリと変える演技も微妙なニュアンスの場面なのに難なくこなしてしまう。天然の才能を感じる。
 物語はものすごく自分好みのお話で、多少おかしくて爆笑してしまう場面はあれど、基本的には物凄く「好き!」と大宣言せずにはいられない。上手くコミュニケーションできずに言葉の世界だけで生きていきたいという気持ち、人に好かれたい&嫌われたくないという気持ち、文字だけで交わす会話の楽しさ、危うさなど、刺さるテーマのてんこ盛りで感情の整理がおつかない。本当に好きなお話なので、将来映画監督になった暁には是非リメイクしたさが溢れ出して止まらない。
 ラストのラストでスパッと大感動場面をぶちあげて、そのまま余計な贅肉なしにスッと終わる感じも最高に好き。あのカメラがユラっと移動してそのままスッと引いてき、そのままゆっくりと余韻を残しながら少しずつ…という感じがたまらなく大好き。ああいう瞬間を求めて僕は映画を観ている。やっぱり映画は最高だし、ビールは最高(今めっちゃビール飲みながらこれ書いてる)