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とうもろこしの島のwigglingのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
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同時上映の『みかんの丘』と同じ時期、同じ地方、同じテーマの作品です。それなのに面白く観れるのは、生きるための営みが丁寧に描かれているからなんでしょうね。
こちらは川の中州でとうもろこしを育てる老人と孫娘のお話。

その川はコーカサス山脈から流れてくるもので、春の雪解け水に運ばれた肥沃な土で作られた中州は作物を育てるのに最適の場所。
主人公の老人はその小さな中州でとうもろこしを育てることに決める。きっと毎年やっている事なのでしょう。

だけどその川は紛争地帯の境界にあたり、すなわち戦闘の最前線でもあるんですね。『みかんの丘』と同様に紛争が老人たちの暮らしに大きく影響を与えることになる。

本作の特徴はとにかく言葉がないこと。中州に畑と小屋を作る前半はまったく会話がないんですね。これもシンプルな生き方だからできることであって。言葉がなくても映像の素晴らしさもあって目を離せません。

そして本作でも傷付いた兵士を助ける事になります。今度は言葉が通じないこともあり、ここでも会話はほとんどない。
年頃の孫娘と兵士の無言のじゃれあいが微笑ましい。

本作は紛争に加え自然の厳しさにも翻弄されるんですね。ラストの人間にはなす術のない自然の力には声を失ってしまう。
悲劇ではあるけど、戦争の犠牲になることに比べるとある種の清々しさがある。こうやって人生は続いていくのだという。

『みかんの丘』『とうもろこしの島』はどちらも名作といえると思うけど、あわせて鑑賞することでより深い感動を得ることができる作品だと思います。
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