翔海

アバウト・レイ 16歳の決断の翔海のレビュー・感想・評価

アバウト・レイ 16歳の決断(2015年製作の映画)
3.3
男になりたい
そう願い続けた。

16歳のラモーナ(レイ)は、性別移行へのホルモン治療を受けたいと訴える。それは幼い頃からラモーナが抱いていた想いでありそれが成長に伴い、想いが強くなっていった。次第にレイに行動は大胆になってゆき、女性らしさを消し去りたい想いに苛まれる。髪は短くして、一人称を彼と周りに呼ばせるようになり、トレーニングをして逞しい男性の肉体を手に入れたいと思うようになる。もちろん、恋を抱くのも女性でありそれでも性別の壁は高く、同級生の男子に舐められたり、親からの合意も得られずに葛藤する日々。トランスジェンダーの悩みは、周りに理解されず自分一人で抱え込むことが多く、心は常に不安定。そんな時に母が別れた父の元を訪れたことで事態は思わぬ方向へ。

エル・ファニングの役の幅に驚かされる。
これまでにエル・ファニングが出演する映画を数本しか観たことがないけれど、印象ががらりと変わったトランスジェンダーの役をこなしていた。トランスジェンダーへの知識が多いほうではない私ですが、メディアでもトランスジェンダーに悩む方のインタビューなどからも幼い頃や学生のときは自分に嘘をつきながら普通に生きようとしたと答えているのを観たことがあったので、レイの決断は勇気があり自分に嘘をつかないという選択はいつか良かったと思える未来があると思える。親心を考えると不安な気持ちや戸惑いは仕方がないけれど、彼の人生は彼のものであり、今を生きている彼の意見を尊重することが彼の為になると思う。辛い決断だけど、いつか分かり合える日が来るはずだから。

わだかまりは解消されず。
キャストや題材は良いのに何故か納得がいかない。トランスジェンダーとしてレイを認めることにしたのか。母の冒した過ちの贖罪は。問題は解決したのかが分からない。私の理解力不足かもしれないが、あまりにも曖昧な終わり方や問題をないがしろにされると観客は置いてけぼりにされてしまう。90分の作品だからコンパクトにしているのは分かるけれど、納得の行く終わらせ方にしてほしかった。母の犯した過ちは許し難い。人は誰しも過ちを冒してしまうのは仕方がないとは思うけれど、大切な人を傷つける過ちはしてはいけないと思う。親として子供を不幸にしてしまうことなら尚のこと。昔に観た映画で「ガープの世界」も似たような過ちから家族が崩壊してゆくシーンが印象的であり、私も教訓として心に刻んでいきたいと思う。
翔海

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