かつきよ

心が叫びたがってるんだ。のかつきよのネタバレレビュー・内容・結末

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

つまらなくはないけど、特別面白くもない……。

冒頭父親の浮気問題からはじまって、心の問題で言葉が喋れなくなった女の子が主人公の話。ちょっと重めで、真面目系の青春恋愛譚。
……ではあるのだけれど、喋れるようになるまでのドラマとか、ラストにかけての展開が全体的に質が悪くて御涙頂戴にもなってない。
成瀬ちゃんかわいいけど、映画の流れを考えるとどうしても自己中に見えてしまって好きになりきれないです。

地域交流会のメンバーの私事(主に4角関係の痴情のもつれ)にクラス全体が付き合わされるだけ、と言いきれてしまうストーリー。全体的に思春期の恋愛におけるめんどくささがリアルに凝縮されてるおセンチメンタル全体映画。
ひたすら他人事の恋愛のおセンチメンタリティを見せられるだけ。結構辛い

◆成瀬のエゴ

特に、ミュージカルやりたいっていう展開は、成瀬ちゃんが「言いたいことがあるけど喋れない……けど歌なら伝えられそうだからそれで私の気持ちをミュージカルにして吐露したい」っていうだけの話。しかもなんなら、その「伝えたい気持ち」っていうのも、坂上君のこと好きになったから、私がヒロイン、坂上くんが王子様で運命の恋人になりたい……的な。ようはミュージカルにかこつけた告白劇、と取られてもおかしくない。建前は色々あっただろうけど、結局絶対にそういう下心はあったと思うし、クラスのみんなで盛り上げたい!とか、地域の皆様に楽しんでほしい!とか、そういう「誰かのために」という意識が明らかに不足していて、交流会関連の行動全てが自分のために向いてるので、見てて全然応援したくなれない。。。

◆坂上くんのエゴ

坂上君は坂上くんで「もともとミュージカルとか好きだし、成瀬ちゃんはなんか頑張ってるから応援したいからクラスでミュージカルを実現したい」ってだけ。最終的に成瀬を応援する理由も、言いたいことがいえない成瀬に、「言葉は喋れているけど結局言いたいことは言えない、感情は吐露できてない思春期真っ盛りの自分」の燻りを重ねていたからで、成瀬を応援することで自分の傷も舐めてるような状態だったのかなと思う。
冷静に状況を受け入れて、純粋な心で応援していたとしたら、それは仁藤ちゃんが言っていたように成瀬ちゃんのこと「好き」って気持ちによるものだったとおもうけど、あんなあからさまに気持ち向けられて全くもって盲目的でいられたのは結局坂上君も自分しか見えていなかったからこそなのかなぁとか……。

◆仁藤ちゃんは

仁藤ちゃんも多分坂上君が好きだからっていうのと、優等生なので特に反対することもなく一番正しそうな選択肢を選んで手伝っているだけ。
委員会のほとんどがエゴ優先で動いていて、誰かのためとか大義名分だけ立派に抱えるけど自分たちの振った振られたのすったもんだを永遠見せられている感じがなんとも気持ちが悪い。
仁藤ちゃんはいい子ぶりっ子っていうのはそうだけど、ちょっと心が繊細すぎて、もう少しわがままに生きてもいいのになー。
ただ、言いたいことが言えないで燻ってる感じが
一番リアルで、一番拗らせてる感じが生々しくてこの映画のテーマに一番合致しているリアルなヒロイン像に思えました。ただ、生々しすぎてヒロインとしては人気出ないだろうなという。悪い子じゃないんだけど、頭良すぎるというかなんというか、見ていてもどかしい。

◆大樹くんは真・ヒーロー

怪我で腐って周りに八つ当たりしたり空回りしてる大樹くんが、序盤は一番ムカつくけど、その分一番素直で好感が持てました。
クサクサしてるせいで人に当たり散らす自己中野郎だけど、その自己中をちゃんと自覚して、そのまま腐り続けないで真面目に交流会の準備に取り組んだり、野球部のメンバーに謝ったり、言葉だけじゃなくて誠意を見せようと努力したり、成瀬ちゃんに謝ったり、きちんと冷静に自分をリセットできる好青年ですよ。
顔のバランスが微妙に悪くて、キャラデザだけがあんまり好きになれないけど笑
仁藤ちゃん好きだったのか問題に関しては、まあそれなりに好きだったのかな。仁藤ちゃん可愛いし、歴代主将とチアが付き合ってたっていう歴史もあったから嫌でも意識してただろうし。
でも、若気の至りというか、ただ思春期で意識しちゃっただけで、本当の仁藤ちゃんを知ったらやっぱり仁藤ちゃんには惚れてなかった気がする。

だからこそ、最後の最後で成瀬に告白する大樹くんは一番腑に落ちたし、好きなシーン。
大樹くんだけが、自己中心的な目じゃなくて、きちんと自分の目で成瀬ちゃんを正しく見て、心から応援していたんだとおもいます。

ラブホで成瀬が自分の中にあった「誰かを傷つける本心」を吐露した時、ふられた坂上君はわかるけど、実質的に迷惑かけられてない仁藤ちゃんにも悪口叫んでたのに対して、直接暴言吐かれたりした大樹くんのことはぴくりとも悪口言わなかったのは大注目ポイント。大樹くん大いに脈ありだと思うな。
悪口出てこないくらい興味ない……と捉えられないこともないけど、成瀬ちゃん本当に好きなのは大樹くんだとおもう。人を傷つけるとか傷つけないとか、そういう一番成瀬ちゃんが囚われていた事を何も気にせず、つねに100パーセント本心を良くも悪くもぶつけまくってた対局の存在は大樹君で、それで失敗もしてたけど、最終的には誰よりも本心に近いところで各メンバーと繋がれてたのも大樹くんだし。大樹くんは冒頭から常に成瀬ちゃんの呪いの対極に居る人だから。

◆DTM研究会

はじめとするクラスのみんな、なんだかんだ劇にノリノリで快演しててよかった。クラスの出し物って、こんな感じだよねー
始まると結束しちゃうもの

◆演劇放棄

展開としては仕方ないけど、成瀬の一番嫌いなシーン。
自分のエゴで初めて、自分の王子様が自分のこと好きじゃなかったとわかった瞬間クラスや地域を巻き込むプロジェクトを放棄。
失恋の痛みもわかるけど、ショックもわかるけど、それで周りに迷惑かけるのは違うだろう。
思春期の学生なのでしょうがないと言えばしょうがないけれど、エンタメ映画でこの失恋による他人への迷惑をまざまざと見せつけられるのは辛い。
最悪なことに、自分が悪いと自覚しているのならまだしも「言葉のせいだ」と結局全ての原因を言葉に転嫁している感じがまた……
吃音のデフォルメというか、心理的な困難をキャラクター性に落とし込んだ一つの形なんだろうけど、思いっきり胸の内を吐露して自暴自棄になってるシーンは腹痛もないまま喋りまくってるし、お前しゃべれるやん!ってな。もう少し表現方法はなかったのかなぁ
違和感とかイラつきの方が優ってしまう

◆母親

全ての、とは言わないけど、成瀬ちゃんが吃音になった原因の大部分を締めるであろう親との問題は明確に解決しないまま
人との関係性とか、赦しとか相互理解とか謝罪とか、そういうものが明確に……ではなくても、なんかしらの形で描かれていないとモヤモヤする。

◆学園ミュージカル

ミュージカルのシーンは丁寧でまあまあよかった
最後悲壮とオーバーザレインボーが重なる歌はアイディアとはさては良かったけど、分割してからさん重ねるとか、歌詞を表示するとかしないと、ごちゃごちゃしてて何も聞き取れず演出の意図も伝わらないし理解もできないし不親切なだけでは??

映画を通して、劇の背景まで全部知ってるこちらとしても、地上のもつれと青春のすったもんだを見せられて辟易としそうなものを、交流会の参加者様方はこんなもの見せられて面白いと感じたのか
劇が人を楽しませるものではなくて、自分たちのエゴの表出としての側面が強く描かれているわけだけど、この映画自体もそういう、メッセージ性の押し売りや思想のドッヂボールみたいな暴力性を感じました。
まずは作品として観客を面白いと思わせるエンタメ性を第一に考えて映画を作ってほしかったです。

突然歌いだしたりとか、共感性羞恥も刺激されるシーンがちらほらあって、見ていて若干辛さもありました。
かつきよ

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