140字プロレス鶴見辰吾ジラ

シン・ゴジラの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
5.0
最新5DXはご存知ですか?

えっ?座席が震える?

いえ、震えるのはあなたの心です。

座席から水飛沫が…?

水飛沫が出るのはあなたの目からです。

どのハリウッド映画かって?

いえ…邦画です。



まず驚いたのはアクアライン崩落事故からのテンポの良さ。閣議招集から巨大不明生物の示唆、そして上陸まで現場と会議、現場と会議の激しいカットを切り、専門用語が機銃掃射の如く発せられ5分刻みで状況が目まぐるしく変化する様は圧巻です。

怪獣映画という枠組みでなくどこまでも虚構と現実を突き詰めたいがために災害シュミレーションとしての構図から対応策に追われ忙殺される人々の様を縦横無尽に抜かれるカメラワークで表現し、結果的に「自主性」に頼らざるを得なくなる国民の受難と政府の雁字搦め性が憂いでなくどこかコメディックですらあるのは、怪獣映画というジャンルの新たな切り口として大正解かと思う。

そして称賛に値するのは1954年の初代ゴジラの存在を排し、既存の概念を打ち破るゴジラを創り上げたこと。初代ゴジラの存在に上書きをかけるという大胆な庵野秀明監督の手腕があの蒲田に上陸したあまりにエクストリームなゴジラ造形を完成させたとだと思うと胸が高鳴ると同時に画面内の国民と画面外の観客に”覚悟”を要求してくる。

そして何より現場と会議室、記者会見のスピーディなカット割から安堵と思われたその一寸先に待ち構える恐怖演出。逃げ惑う市民のから振り返ると画面いっぱいに広がるエクストリームなゴジラ造形に、思わず「あっ!」口を覆ってしまった。

樋口特撮も素晴らしく跳ね飛ばされる車や崩壊する建物の迫力。この既存の概念の破壊はエメリッヒ監督の「インデペンデンスデイ」1作目の巨大UFOの飛来の如く日常に侵食してくる異形のシークエンスとして申し分のないものだった。

虚構vs現実とのコピーに恥じることのない自衛隊の総力を結集した防衛作戦はミニチュアでは決して生み出せない大胆不敵なカメラワークと迫力であり、それに対するゴジラの造形美は、「ゴジラ2000 ミレニアム」のような前傾姿勢のケモノでなく、絶対不動の”神の化身”であり”荒ぶる異形”に違いなかった。

先にも挙げたが初代ゴジラを排したことによるエクストリームなカードをゴジラに対して切れるため、ゴジラが齎す災厄と攻撃手段には絶望を禁じ得ず思わず「嘘だ…」と呟き、ただだ畏敬の念が流し込まれたようだった。

まさに庵野秀明監督が”したいようにやった”新たなゴジラが東京を蹂躙したのだ。庵野=エヴァンゲリオンという図式すらも根底から焼き払ったのだから清々しい。

最終決戦に向けて日本は
鬱屈し
抑圧され
長いものに巻かれてきた歴史を持ち前の勤勉さを武器に立ち上がり、日本にしかできないようなギミックを惜しげもなく使った見事なクライマックスに仕上げている。そして関を切ったかのように往年の名BGMを掻き鳴らすところで涙が止まらなかった。

最終決戦開始時のセリフは「もっと気の利いたこと言えないのか?」と拍子抜けするかもしれないが、ただそれが日本の武器である勤勉さとそして”情”による王道であった。

ゴジラを”荒ぶる神”と形容するならばその決着のつけ方も素晴らしく、何より日本という国を彼の国の属国と揶揄される日本を3・11という未曾有の災害を乗り越えた日本という国を故郷を”勤勉さ”と”情”を武器に守護しようとする日本人の精神にこう捧げたい。

「独立記念日おめでとう」



後悔はない!
本当に本当に
年間ベストであると宣言する!







そして本日は私の誕生日である。
誕生日に年間ベスト、オールタイムベスト級作品に出会えて本当に嬉しい。