八木

クリード チャンプを継ぐ男の八木のレビュー・感想・評価

4.8
 監督のライアン・クーグラーがブラックパンサー撮った人かつ年下と知って震えている。見るわブラックパンサー。

 めちゃくちゃ面白かったです。舐めてた。ロッキー1とテーマ的に、映像的にも通じあわせながら、主役の二人が生きる上の苦悩をスムーズに提示したうえで、ラストにかけてちゃんと報われて感動に繋げられているのがすごい。
 コンラン試合前のアメリカパンツとか、箱から出てきた段階だと「いやーちょっとやりすぎだし造形的にダサくね?」とか考えてしまったんだけど、実際来て試合が始まったら、試合自体の実在感と合わせて全く違和感ないんですね。もちろん、アポロがこの世界でアメリカを背負った伝説的ボクサーであって、相手はイギリスのチャンピオンという対決の構図を見せてたのもあるんだけど、「原作リスペクトやってまっせ」という目配せだけじゃなく、アドニスがアメリカパンツを履いて戦うクリードとしての必然がちゃんとあったから、自然に受け入れられたのだと思った。
 これを書きながらこの映画の冒頭、メキシコ野試合時代の入場シーンを思い出しているんですが、あのとき、妙にワンカットで長くアドニスの背中を映してて「これいるんかね」と思ったんですけど、コンラン試合前に印象的に見せてた、アメリカカラーの「チーム:クリード」を背負ったロッキーたちと合わせていたことがわかって、構成にまた泣きそうになった。試合後にはスパー相手のアミールまでもがアドニスの健闘にぐっときている(という演技)をしていて、監督の演出手腕と合わせて感動した。あの画面にはチーム:クリードが必要なんですよ。
 ロッキー1って、「うだつの上がらん奴がなんとか這い上がろうとする」という太い道筋一本で成立している作品であって、それ以外のすべても素晴らしいとはいえない出来だと僕は思っているのですが(好きですけども)、この映画はサラリーマンとしてある程度の成功を得ながら、そこに自分らしさを見いだせず、自分であろうとした結果に、家族や友人からルーツを見つけてラストへとつなげていく現代的にで丁寧な筆致があるのが素晴らしいと思います。この映画から見てもまったく問題ないけど、「あー、これ見る前に1と3見とけば良かった」と思っていました。
 マイケル・B・ジョーダンの現代的なルックス(劇中『不良じゃない』と表現されるけど、本当ぴったりくるハンサム加減)もいいけど、スタローンのきたねえオッサン加減もすごくいい。くたびれたフリースとかコートとかパーカーの癖して、ハットが全然似合ってない感じが現代とフィットしていない、取り残された感じがしてよい。だからこそ、病気のくだりが単なるお涙頂戴じゃなくて、説得力帯びてるのよね。

 ところで、プロ1試合目のウンコのくだりは何だったんですかね?異様な緊張とか体調不良の強調で、後から生きるのかなとか考えてたら別に何もなかったので不思議な感じがした。
八木

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