あまのかぐや

その怪物のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

その怪物(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

邦題は「その怪物」、原題は「モンスター」というこの作品。

この邦題はなかなかセンスありますよね。このそしてパッケージ。このキャッチコピー。「コインロッカーの女」とおなじく主演、キム・ゴウンのこの作品ですがこの2本が並んでいたら間違いなくこちらの方を手に取りたくなります。

・・・が!これがまたパッケージ詐欺なのでご注意くださいね!

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冒頭の暗い画面、殺人鬼の幼少時代の話から、一転してのどかな田舎の露天商の娘のエピソード。まずここで「え?」となります。見上げるお空のお日様が雑なCGでおばあちゃんの顔になって、野菜を売る孫娘に語りかけるシーンは・・・一体なんだったんでしょう。「あれ?借りた映画間違えちゃったかな?」と一瞬戸惑います。殺人鬼に妹を殺された姉、姉を殺された妹の二人が復讐する物語よね?これ。

おばあちゃんが残した露店の縄張りを守り、妹の学費のために野菜を売る屋台の娘役がキム・ゴウン。野菜を蹴散らし投げつけ、大声で騒ぐ歌う笑う、などのオーバーアクションがやや鼻につきますが、どうやら少し頭の弱い娘という設定のようです。

都会の裏社会的などろどろしたシーンと田舎娘のコミカルのシーンが切り替わるたびに、観ているほうは混乱するのですが、そのうちにはたと気付きます。

ざっくり分けるとこう。

「殺人鬼テスと義理の兄、義理の母」パート
「テスの義理の兄と、依頼人の会社社長」パート
「その社長の工場で働く従業員の娘と、その妹のキェ・ナリ」パート
「田舎の露店商、ボクスンとその妹」パート

こんな感じかな。わかりやすいところで。

美貌の殺人鬼、テス周辺の話は、血みどろサイコパスの物語。
社長と雇いの裏社会系のヒトたちの話は韓流クライム系。
キェ・ナリとその姉、勤務先の社長の話は、韓国の社会の暗部を描くパート。
ボクスンのエピソードはハートウォーミングコメディ。

要は韓国映画の「どこかで見たような」美味しいところをパッチワークしてみましたー、みたいなことでしょうか???

被害者をばらして砕き、粉末にして陶器に練りこみ名前を付ける、とか。
脱北者を用心棒にしている闇社会のボスとか、育ての親である姉を殺され健気に生きる妹(7、8歳)とか、・・・なーんだかみんな「はて、どこかで観たような」な設定があちこちに。

そしてタイトルの「Monster」は活かしきれているのかいないのか、微妙ではありますが、韓国映画に求める執拗なまでのバイオレンス描写はしっかりあります。娘っこにも子供にも容赦なくて、ちょっと引く。ほんとの悪の根源にいる奴は成敗されて欲しかった。そのヘンのカタルシスは得られません。周りの「やや悪」ぐらいのキャラクターは、ばったばったと血の海に消えていきます。

社長の弱みを握ったことで返り討ちに合い、テスに惨殺されるお姉さんと、完全に巻き添えのボクスンの賢い妹ぐらいしか若い娘でてきません。しかし妹分(子役ですね)キェ・ナリがほんとうに可愛い!セリフの字幕が「・・・ですよ」ってちゃんと「ですます調」になっているのがさらに可愛い。ボクスン(精神年齢7歳ぐらい)とキェ・ナリ(実年齢7歳ぐらい)のコンビがとてもよかった。2人でいつまでも幸せに暮らして欲しいな。

・・・あれ?わたしサイコホラーサスペンス観ていたはずが・・・こんな感想???

大福とか竹輪とかステーキ肉とか一緒に鍋にぶっこんじゃったみたいな、一見、支離滅裂なつぎはぎ仕立ての珍作ですが、不思議と最後まで目が離せないし、最後は意外にきれいに収束しているので、観たあとの後悔はなかったかな。なんかよくわかんないけど、すごい着地観たわ、という気持ち良さはあった間違いなく。

きれいにまとまりすぎて余裕があったのかエンドロールにボクスン・パートのサービスシーンまで入れているが、これは完全に蛇足でしたな。

あと韓国の食べ物がいろいろ出てきて美味しそう。やはりジャジャ麺ははずせないね!

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コメディ担当、田舎の天然娘ボクスン役で世間を「は?」と困惑に陥れた女優は、コインロッカーの女=10(イリョン)役のキム・ゴウン。ラスト数分の血まみれバトルで彼女が気になったら「コインロッカー」のほうも観てみてくださいね。この子の剃刀のようにキレのよい顔立ちは、クールなアサシン役のほうが似合うかな。
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