あまのかぐや

オールドのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

オールド(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

これは劇場で観たのですが、冒頭のシャマランの「映画館へおかえりなさい」というご挨拶動画にグッと来た。劇場で観たいよね。そういうところだぞ!シャマラン!(こぶしで涙を拭いながら)

そしてこれって…もしかしたら「ネタばらしスタート」のシーンの伏線でもあるんじゃないかな。そういうところだぞシャマラン…

過去のシャマラン映画をこよなく愛している(エアベンダーとアフターアース除く)(みてないから)わたしとしては、これこれ!こういう感じよ、と終始わくわくとぞわぞわが止まらなかった。過去作でいえば「ハプニング」に近いんじゃないかと思う。同時多発に近いぐらい矢継ぎ早やに不可解なイベントが発生し、その度に「何が起こってるんだ!」とバタバタ走り回る感じ。ただ「ハプニング」でモヤっとまとめてしまったと結末の反省を込めたかのような…。そしてもう一作「ヴィジット」のような健気な姉弟の成長していく姿(ほんとに成長してる)に胸打たれた。

映画の中では一晩しか経過していないのだけど、そしてリアルに108分の上映時間なんだけど、時間が消失する不思議な上映時間でした。

姉弟の役に、一度観たら忘れられない「ヘレディタリ―」のお兄ちゃん役、アレックス・ウルフと、「ジョジョ・ラビット」で壁の中に住むユダヤの少女が印象深かったトーマシン・マッケンジー。どんどん成長していくからほんの一時期の姿なんだけど贅沢な使い方だね。(そして幼少期から中年期まで違和感なく役者がかわっていく)

姉弟を除く、大人の歳のとり方がリアル。見た目がそんなに変わっていないようで、ある時点ぐらいから突然グッと「老いてるな」と気付く。パパは目が悪くなり視界がぼんやりとしてママの皺なんかわからないようになる。ママは耳が聞こえなくなり、ぐだぐだくどくどいうパパの声もきこえなくなり、二人とも会話にならず、ただにこにこと感情表現も薄くなってくる。このあたりわたしぐらいの年齢になると身につまされる。

お金持ちの医者の一家(義理母・モデル妻・幼子・わんこ)が悲惨パートを全部受け負ってくれて、悲しかったし恐ろしかったし、めちゃくちゃホラーでした。

アジア人と黒人のカップル、見た目年齢不詳・見た目年をとらないモデルケースか。鼻血ラッパーと彼女(死体)はよくわからないな。前回の実験の生き残りなのか。

このネタ、このアイディアってやはりコロナ禍の中でワクチンや治療薬の開発について思いを馳せている時にひらめいたのかな。っておもった。これから先長く生きていく子供たちにとって今投与するワクチンがどういう影響を及ぼすか、ってなるべく考えないように目をそらして過ごしているけど、でも、それは遠慮会釈なく突きつけてくるシャマランってやっぱり怖い…。よく言われる「シャマラン的おおがかりで派手なドンデン返し」ではないけど、じわっとしみる情緒に訴えかける、いまこのタイムリーホラーなんじゃないかと思う。ジャンル不明。

コロナ終息後に公開される予定で一度予定から引き上げられたけど、収束する気配がないから、この夏公開に踏み切ったらしい。けど収束してからじゃ遅い、いまこの時期に観るべき映画だと思いました。

最初のリッチなリゾートホテル到着のシーン、とても懐かしい旅のはじまり・ワクワクが甦ってきたのね。太陽と島の緑と海。自然光にみちみちた世界。マスクをしてみんなシンと口を閉ざした真っ暗な劇場のスクリーンの中ではあるけど。コロナ前の、たくさんの人が行き来する雑踏のシーンを観るのとは全く別の意味で、すごく別世界だった。

ラストまでにもう一度その場が出てくる。二度目を観るときには最初に出てくるときと違う思いがこみあげてくるけどね。あー、はやく南の島に旅できるような日常に戻ってほしいな、あまり年をとらないうちに…。
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