あまのかぐや

孤狼の血 LEVEL2のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

今年一番待ってた映画がついに公開。前作は劇場で観ていなかったので、今回こそは劇場で!と、逃げ場のない鑑賞環境をつくってしまったことを後悔してしまうような、…冒頭からラストまで漏れなく強烈・壮絶な映画でした。こわかったよー。

前作の中心人物、ガミさんこと大上刑事(役所広司)から主役をスライドさせ、サブだった若き大卒エリート新人・日岡(松坂桃李)が今回の主人公。

時代が昭和から平成にうつったからなのか、全体的に前作のなんでもありの勢いと猥雑さがなくなり、かといってスタイリッシュとは言わないまでも、どこかよくわからないけど「時代はかわった」「平成初頭」を感じさせた。

組の面々の小粒さも気になった。前作の登場人物たち、でてきたとたんに、これ一般人じゃないと思わせるヤバい空気感が足りないというか、…鈴木亮平演じる上林が一人だけ作画違うぐらいものすごくて。上林シーンだけを振り返ったら(振り返りたくないけど)夏休みのレポート1つ完成してしまうんじゃないかってぐらい要素盛りすぎ。広くて筋肉質の背中におったモンモン以上に、背負った人生の怨嗟、その重さと暗さを突き抜け、見事に上林を演じ切っていた。

広島弁とか呉弁とかよくわからないけど、すごく滑らかでどの俳優もすごく聞き取りやすく、がなりたてる声も何故か不快にきこえない…これが不思議。とくに鈴木亮平の発声?というか発語のなめらかさ。さすが外語大。

あと脇だけどチンタ演じる村上虹郎が愚かで健気で危なっかしくて…最初からフラグ立ちまくり。

じつはわたしの中でもう一本フラグがあったけど。こちらは見事にへし折られた。やられたわ。あの夫妻には。

昭和から平成に時代がうつり、コンプライアンス的な配慮なのか、局所(というのかな)直接接写や女性をモノ的に扱う描写もかなりギリギリにおさえられていたような気がする。冒頭のピアノの先生は…ほんとキツイシーンだったけど、あれ以下でもあれ以上でも怖さが伝わらんし、…映画館で正視できずにシートの中でギュッと身を縮めるなんて、ほんと久しぶりだ。

カーチェイスからの血みどろ肉弾戦も韓国映画風なのやりたかったんだろうな。上林を派手な白スーツにしたのは流石の演出。血糊の量も傷の深さも、死闘感が伝わってきた(遠目にも取っ組み合いさなかでも日岡と区別つくし)

ラストも美しくまとまっていたな。ガミさんの御礼参り・3年前の「やっちゃれ会」というからたぶん日岡はまだ30歳そこそこ、または手前ぐらいなんだろう。ガミさんの域にはまだ到達できなかった。けっきょく前作同様、大きな組織の犬のまま狼にはなれなかった。ガミさんの幻を追いかけ、見えない狼に捉われ追いかけ続けるのか日岡…なんだか象徴的なラストでした。

上林を「和製ジョーカー」と呼ばれるのを何処かでみた。「最凶ヴィラン」あのジョーカーと比較すると、何というか、日本の社会ならではの闇が深く、あとに残す粘度が高い。
それにしても悪が死んでめでたしめでたし・はい終わり、じゃないんだよね。たぶん日岡が離れた呉原市、復讐が復讐を呼び、抗争が抗争を招き、もっともっと地獄な様相になったと思われ。

やはり「2」までだと落ち着きが良くないから、やっぱり「レベル3」はあるんだろうな。昭和、平成ときて、まさか令和(じゃねーだろ)今作の日岡のまだ残る青さは次作への布石と思いたい。

そしてこんどこそ次があるなら出て欲しいな一之瀬(ちょっとよくわからなかったんだけど、一之瀬(江口洋介)はまだ服役中なんでしょうか…。)

あ、それからー!かたせ梨乃ー!ねえさーんー!
うわー、すげー、モノホンじゃー、と、胸の内でつぶやいてしまいましたが、あのゲスい五十子会長の未亡人と思うと、清冽なきっぷのいい姉御というより、…納得の壊れ系あねさんっぷりでした。

そして斉藤工が脇なのに、どこか消せないセクシーオーラをだしていましたね…なんだろう、あの謎の色気。
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