あまのかぐや

シャン・チー/テン・リングスの伝説のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

MCU第4フェーズのはじまりを感じさせる。
前回劇場鑑賞した「ブラックウィドウ」は、内容的にもアベンジャーズシリーズの締めくくりとしての位置づけでしたが、今回こそほんとうに、長くて濃くて強固だったアベンジャーズの輪から外へ出た感じです。

かなり前半から「はてわたしはなんの映画を観てるんだっけか」となんども思いました。単品として観たら、とてもお金かかってて大きなスクリーンで見るべき、ちょい遅れてきた夏休みの大作ファミリームービーの風格。

しかしそれならば、もうあのオープニングのテーマとタイトルロゴ、いっそ出すのやめてほしい。
それなら新しいフェーズに、「シャンチー」の世界に、難なく入り込めたかもしれない。

今作の副題にもなっている「テンリングス」とか、途中で出てくる西洋人のおじさんについて知りたかったら「アイアンマン3」だったかな?を参照のこと。わたしは観てからしばらく時間が経ってしまっていたので、ああそういえばあの作品にでていたな、と。(でもまぁ彼に関しては、流し観ても、存在を忘れててもそんな重要な問題ではなし、と思います)

まだ今後のMCUについては、これまでのフェーズ3までのように(わたし自身)「狂信的ラヴ」な姿勢でもなく、推しもみつけられず、まだ様子見な感じなので、否定的なことも肯定的なことも言えずにいますが、シャンチーを観た感じ率直にいって「良くも悪くもディズニー映画だな」という感想を持ちました。ひねりが…どこにもない…なんてまっすぐなエンタメ大作であることか!

映像の素晴らしさ、中国(華流)映画界が築いてきたアクションへのリスペクトは素晴らしいとおもいました(技とか型にも名前や意味や、いろいろ考察ありそう、わたしは詳しくないんですが)

ただ、わかりやすい王道ヒーロー物語のなかに、ほんのり含ませた毒の部分・負の部分が(「キャプテンアメリカファーストアベンジャー」や「アイアンマン1」)にあったような)そこがまだかんじられないかなぁ、と。…それあって故の、大人が観てハマるヒーロームービーだった。

物語の中心をなす主人公のキャラの薄さ(わたしの目には何度か辰巳琢郎にみえた)。ルックスも薄けりゃ背負った「過去の秘密」とやらも薄い。常に一緒に行動してる相棒のケイティ(オークワフィナ)が存在感、強すぎて。…シャンチー(ショーン)これで良いのか、と。

それにしてもケイティ、強すぎん?現実界での超絶運転テクニックからはじまって、マカオの高層ビルアクションを生き抜いて、さらに異世界についてきて、それ相応に活躍しちゃう。なにもの?強化人間でも修行者でもないケイティ…もしかして、じつはすごい正体を隠しているのか???

祖国や家から飛び出してきた東洋人であること、ブルーカラーの職業人であること、それ自体がマイナス要素からのスタートとみるかどうか、またその部分をどのように描くか…マーベル/ディズニーじたいも「ムーラン」の件があるからか、おそるおそる手をだしていて「できるならそこのところはあっさり流してしまおう」風なおよび腰も感じる。

そういう要素をもっとねっちょり重たく、何処かしらの傷をえぐって描くことで、爪痕残す名作になるか、この先のMCUの歴史のに刻まれる作品になったのではないか、と…例えば「ブラックパンサー」のキルモンガーという素晴らしいキャラもその痛みから生まれたよね。…

一番テイストが近いのは「アントマン」なのかな。この後、「アベンジャーズ」というワードは時々回想のように出てくるだけかもしれない、けど、今後「アベンジャーズ/エンドゲーム」みたいな「ヒーローアッセンブル!」が描かれるときにシャンチーがシャンチーである理由、フェーズのこのタイミングで、このテイストでシャンチーが作られたのは、なんかの意味があるのかもね、アントマンみたいに。

ちなみにショーンとケイティが働いていたホテルはサンフランシスコ。「アントマン」の登場人物の彼らと絡みがあるかな、て期待したけど違った…。

コロナ禍での撮影だったのか、地に足がついた現実の市街地シーンはあまりなくて、序盤のバス内でのバトルシーン全精力を注いでしまった感じ。作ったひとたちの力と熱量を感じた。あとはマカオの秘密カジノと、…で異世界(笑)だから、きっとずーっとグリーンの幕の中での演技なんだろうなぁって気がしながら眺めていた。あと、辛口いっちゃえばその異世界VFXも、わたしとしては韓国映画の「神と共に」のVFXのほうが「おお!」ってなったかなぁ。なんかもう…そう簡単には映像技術じゃ驚かないぞ、と。

でもあのふわふわもふもふした生き物、可愛かったな。膝にのっかってくるの・・・そんな小技もまたディズニーお家芸。でも、あちら世界に登場する龍とか獅子とか、東洋的な想像上の生き物のフォルムはハリーポッターやその他ファンタジー作品でやりつくした感があったんじゃないんでしたっけ?

敵役がトニー・レオンというのは初めからわかっていたけど、このお父さんなんかもう分かり易くヌケててね…。サノスを筆頭にエゴやオーディンなどなど、次世代に負債を残すダメなおとうさんたちがこれまでMCUには登場してきたけど、アジアが誇る名優、トニー・レオンには「でも…、わかるよ…!」ってこちらにも痛みを共有できる悪を演じてほしかった。いっそ、過去に見捨ててきた→その後再会し共闘した妹が真のヴィランだった、というほうが物語は広がるなー(とおもったら、妹が悪の組織「テンリングス」を引き継いだってことかな、エンドロール後)

MCUお得意のエンドロールはやっぱり好き。「ブラックパンサー」の砂CGのエンドロールが大好きだったけど、今回の水CG、とても美しかった。
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