backpacker

ボーダーラインのbackpackerのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.0
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督が、乾いた大地を乾いた視点で、淡々と冷静に、静かな引き絵と余白のある寄り絵を織り交ぜ映し出す、メキシコ麻薬戦争最前線の一幕。


メキシコ。
メキシコと聴いて、皆さん何を連想しますか?
メキシコ料理や死者の日の祝祭を思いつくタイプですか?
私は、麻薬カルテルと誘拐・人身売買を連想するタイプです。
メキシコ関連映画って、やたらそっちの方が取り上げられて、綺麗なイメージが中々出てきません。美しいメキシコの世界となると、キュアロン監督の『ROMA』くらいしか思い出せない……。根暗人間故に偏った映画ばかり見てる証拠ですね。


それはそれとして、本作は私のメキシコイメージにバッチリ一致すると同時に、その印象をより強固なものにするのに一役買いましたが、実のところメキシコの犯罪事情の掘り下げという点で見れば、深度は浅いように思えます。
というのも、アメリカ国内で増加するメキシコ系による犯罪から、メキシコ巨大麻薬カルテル上層部への話とシフトする中でも、メキシコの地にいる時間はごく限られるからです。
本作が重点を置くのは、メキシコの犯罪と麻薬戦争ではなく、主人公ケイト(演:エミリー・ブラント)とアレハンドロ(演:ギレルモ・デル・トロ)の内面心理が魅せるまさしく人間ドラマだからです。


静かな作品世界が醸し出す情緒、それがジンワリ沁みてくる、大変好みの映画でした。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の作品は、今のところ鑑賞した限りどれも好みで、今後も追いかけ続けなくては……と改めて認識しました。
backpacker

backpacker