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グレートウォールの小のレビュー・感想・評価

グレートウォール(2016年製作の映画)
3.6
評判はあまり芳しくないけれど、インド映画の『バーフバリ』と同系統かなと思い比較のためもあって鑑賞。なかなか興味深かった。

冒頭、万里の長城に関しては史実と伝説があるがこれは伝説であるというエクスキューズから始まるけれど、普通の相手ではないことは知って臨んだので、ガッカリ感はなし。

それよりも感心したのは、白人救世主物語かと思っていたけれど、最新のVFXをフル活用した中国プロパガンダ映画だったこと。さすが、北京オリンピックの開幕式・閉会式を演出した巨匠監督だけのことはありますな。

製作費1億5000万ドルは、VFX画像ギネス記録の『バーフバリ』(4000万ドル)の3.75倍。美しく、特になめらかさが違うCG映像は『バーフバリ』をはるかに凌駕。さすがハリウッド、って当たり前か。

敵は60年に一度襲ってくる怪獣。だから、中国とアメリカが一緒に戦うことに違和感なし。万里の長城に備えた武力に、中国すげぇ、とアメリカ人マット・デイモンが驚嘆。美人兵士だけで構成される鶴軍は、攻撃・防御は二の次で、どうですかこの美しさは、と。

誰も信じず、信じるのはカネと己の力のみなアメリカ人マット・デイモンに対し、超美人司令官の中国人ジン・ティエンが、人を信じることが大事だよと優等生のように諭すと、強欲アメリカ人マット・デーモンも、そうだねと何故か納得、みたいな。

ラスボスとの対決はマット・デイモンの超人的な弓矢のテクニックが炸裂するかと思いきや、中国とアメリカが手を取り合って製作した映画はこうでなくっちゃ的な。ぼよん、みたいなイマイチしまりのない展開はご愛敬。剛のアメリカと柔の中国が一つになって頑張れば向かうところ敵なし、世界は平和、ってことですかね。

ここまであからさまだと、かえって清々しく微笑ましい。アメリカの興行成績は良くなかったみたいだけれど、宣伝費だと思えば高くないんでしょ、きっと。日本人のメンタリティではアメリカを相手にここまでの映画はつくれないだろうなあと、寂しいのか寂しくないのか、ちょっと複雑な気分。
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