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サウスポーの小のレビュー・感想・評価

サウスポー(2015年製作の映画)
3.4
とても泣ける話のはずだったけど、思ったほどではなかった。多分、主人公の怒りの対象が主人公自身に向いているからかも。これは深く自省し、悔い改める物語。

怒りがエネルギーとなるボクシングチャンピオンの主人公だけど、それが試合だけでなく、普段から怒りやすいというのが残念なところ。そのせいで妻を亡くしてしまい、やけくそな試合をして王座から陥落するだけでなく、ボクシング界からも干されて財産をすべて失う。唯一の肉親となった幼い娘からも嫌われ「マミーじゃなくて、ダディが死ねばよかったのに」と言われる。

という状況からの復活劇だから大きなカタルシスを期待してしまうのだけれど、現実的にはこうならざるを得ないかなあ、という感じ。試合に勝っても負けても悔い改めた、とするしかないみたいな。

観ている側(私)は「自分、そこまで短気じゃないし」と思っているから、どうしても共感しにくい。怒りやすい性格を克服することがボクサーとしてのさらなる強さにつながることもあって、「怒ってはダメ」という説教くささが先に立ち、今一つノレない。

話を盛り上げるには、娘が父親に対してもっと冷たい方が良かったのではないかと。ずっと冷たいままにしておいて、クライマックスのボクシングの試合に感動して許すみたいな展開。ベタな気もするけど、これなら娘と、娘に許された父親の双方に共感できて、泣ける気がする。

ボクシングシーンの演技は、本格的でなかなか見ごたえがあった。俳優さんの肉体が凄くリアリティ十分。それだけに、もうちょっと盛り上げてくれればなぁ。
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