円柱野郎

仁義なき戦い 頂上作戦の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

戦後の広島で起きたヤクザの広島抗争を描いた実録ヤクザ映画のシリーズ第4弾。
血を血で洗う一大抗争が繰り広げられた昭和38年~昭和39年。
山守組への報復を決意した広能(菅原文太)は、後ろ盾の明石組の力も借りて全国から1000人規模の応援組員を広島へと終結させるが…。

広島抗争の顛末を描いた本作だが、ほとんどの場面では二分された勢力による構図がハッキリしてしまったので、前作の様な組織内外での駆け引きは少し控えめになった印象。
広能の怒りで幕切れとなった前作の続きという事を考えても、そこのテンションからは幾分か落ちたような気はしなくもない。
でもタガが外れたように繰り返される報復の連鎖はひどいもんだけどね。

抗争が激しくなって堅気にまで被害が及んだもんだから、ついに警察やマスコミと言った世論も動き出す。
そういう意味ではヤクザ以外の勢力による状況への介入が大きくなってくる段階なのだけど、作劇的にはそのあたりの別視点での描写は最低限で、あくまでヤクザ同士の抗争で話に終始するので警察と暴力団の駆け引きといった面白くなりそうな部分には踏み込まない。
それが故に、これから一大戦争だという時に逮捕される広能の描写は警察視点での熱量があまり伝わってこないので、どこか淡泊に感じられたかな。
史実を基に脚色しているわけだし無かった戦争を有った様に描く必要はないけれど、物語上の広能と山守(金子信雄)の対決という意味では不完全燃焼なまま終わってしまった気はする。

本作で事態を悪化させるのは主に若い衆の暴走か。
前作までの若い衆は状況に翻弄された鉄砲玉の悲劇的な側面が強かったけど、今作では後先考えない奴らの行動がイカンなあ。
まあそれもこれも煮え切らない打本(加藤武)という存在が原因でもあるのだけど、本作の打本はよりコミック的な可笑しさのある場面も出てきて、全体的に広能のギラギラした存在感で支えられていた前作までとは少し作風が変わった気がしなくもない。
打本組の若い衆が山守を殺ろうと出て行ったって話を、打本自身が山守組の武田(小林旭)に電話したシーンは笑ってしまったw

中盤で逮捕されて退場してしまう広能に代わって、話の中で存在感を増すのは山守組ナンバー2の武田。
いかにもインテリヤクザ風な感じが良いね。
ヤクザを取り巻く時代の変化を感じつつこの抗争をまとめ上げようとする姿が、タヌキ親父の山守との対比も相まって非常に格好良く見えてしまったw
広能とはまた違ったタイプの格好良さだ。

結果的に両勢力とも得るもののない抗争で終わってしまったこの一連の出来事。
寒そうな裁判所の廊下で話し合う広能と武田の姿が、この戦争の虚しさを実感させる。
考えてみれば二人とも山守というタヌキ親父に翻弄された間柄なんだなあ。
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