小

LION ライオン 25年目のただいまの小のレビュー・感想・評価

3.4
基の実話は奇跡的で、感動的ないい話。でも映画は、前半はとても良いけれど、後半はちょっと~。

インドのスラム街に暮らす5歳の少年サルーが、兄と仕事を探しに出かけた先で一人電車で眠り込んでしまい、遠く離れたカルカッタまで来てしまう。迷子になったサルーは身に降りかかる危険をかわしながら施設に入り、幸運にもオーストラリアの子どもいない夫婦へ養子に出される。

立派な青年に成長したサルーだったが、故郷の実母、実兄のことが心から離れないどころか、思いは強くなる。25年後、友人からGoogle Earthを使えば、インドの実家を探せるんじゃないかと教えられ、一人「地図の旅」を始める。

迷子になり養子に出されるまでの部分がインドの実情を丁寧に描き出していて、これがかなり深刻な事態。インドには孤児がたくさんいて、しかも彼らの将来は苛酷。養子に出されたサルーはとても幸運だということがわかる。

青年になってからは、ちょっとアレじゃないですか。故郷にいるであろう母と兄を想い、それがサルーの心の穴になっていることは理解できる。ただ、個人的にはこれほどまでにも美しく、もの悲しい雰囲気にどうしてもリアリティを感じらなかった。感動、涙を狙いすぎじゃないですか、とちょっと冷めてしまった。

原作は読んでいないのだけれど、ちょこっと調べたところGoogle Earthに加え、Facebookも活躍するらしい。映画にはFacebookは出てこないけれど、どうせ脚色するなら、Facebookでの人との出会いを通じた現代的なロードムービーとかにできなかったのかしら。

離れ離れになった肉親と何十年振りかに再会する物語が感動を生まないはずがない。昔はそれだけのテレビ番組があったくらいだし。それが今、映画になるのは、ネットの力を使った「地図の旅」という現代的な方法で家族を探しあてたからだろう。

「地図の旅」をもっと深掘りしてこそ、本作の意味が大きくなると思うのだけれど、それは従で、伝統的な人間ドラマが主のように描かれているような気がする。でも人間ドラマの方は既視感があり過ぎて…。だから、その部分の脚色を濃いめにしたのかしら。タイトルにもある『LION ライオン』も狙い過ぎで、ちょっとズレてる気がする。

前半の迷子の部分はなかなか見ごたえがあるし、知っておくべき内容だっただけに、後半の失速が残念。全体通してみると、惜しい作品だったかな。
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