八木

ワイルド・スピード ICE BREAKの八木のレビュー・感想・評価

4.5
ステイサム映画になってました。ステイサム映画として見た場合に、「根に人の好さを感じさせるけどとにかくケンカでけりつけたがるステイサム」という定型的かつ純度の高いキューティーステイサムを拝むことができます。また、キャストクレジットの登場順でおわかりだとは思いますが、「もう!ステイサムもう!」と、いない隣人の左胸をドンドンと叩きたくなるおいしい役割をウチのステイサムに担わせていただいているので、これはもうステイサム映画でした。
よって、7作目までの「ドムが狂気に近いヤンキー的”ファミリー(非家族)”愛をぶん回す映画(あと高級車いろいろ)」に加えて、やはりステイサムのジョインによる余震でシリーズの方針に若干の軋みが出たと思って構いません。
しかし、お気楽犯罪狂気のファミリー愛カーアクション映画(長い)とステイサム映画との相性は抜群で、様々なステイサムをいただいてきた御仁に対しても、間違いなく満足できる仕上がりになってると思います。ドウェイン・ジョンソンが若干コメディリリーフみたいになって、刑務所で初登場のステイサムに食われてたもんなあ。
もちろんシリーズおなじみのファミリーも登場して、「ああこいつこういう役割だったなあ」と話を通じて復習ついでに懐かしみを得る機能もばっちりあります。僕はミシェル・ロドリゲスのエロいツンデレ感が超好きなので、『ドム、どうして…』というアンニュイなミシェルの表情をたくさん見てニヤニヤしながら、このシリーズにミシェルが復活したときの喜びを同窓会的に思い出したりしてました。かと思えば、前作のハンみたいに、「そろそろキャラ渋滞してきたな」と感じたのかどうか、ファミリーの整理もきっちり進めてたりして、次作の準備も始まってるように見えました。
詳しくはネタバレするので言えませんが、今車関係のニュースといえばこれでしょ、って感じの最新ネタをカーアクションに持ち込んでいて、「車間距離」や「人肌の感じない運転」を利用して見せる一連の流れは脳が焼けるような気持ちで「おおおお!!!」と思っていました。
スカイミッションでは、ポールの不幸な事故によって、(正直に言えば)余計なドラマを排除して鑑賞することが不可能な作品になってしまいましたが、今回は逃れられない事実と適切な距離感で向き合い、素直に感動できるドラマを描けていたと思います。
もちろん、「5分で?」とか、「ドムってそんな立場になってましたっけ?」とか、「スキンヘッドのマッチョ多すぎへん?」とか、まだ思い出せば何かあると思います。が、7作重ねて発生した数々の面倒くせえ縛りを処理したうえで、これだけ純度の高いエンタメ作品を作ってくれたことに感謝しかないです。シリーズ最高傑作であり、高純度ステイサム映画でもあり、まったく幸福な映画になっているのではないでしょうか。
減点があるとしたら、序盤に本当に最高だったステイサムのキャラクターが、(やむをえないとはいえ)ラストにかけて大幅に軟化しちゃったところです。突っ張り続けてたら最高だったのになあ。
八木

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