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マネー・ショート 華麗なる大逆転のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.6
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈金融トレーダー、4000億円を稼ぐ〉
 ~リーマン・ショック」 / 2008年
・場所: アメリカ/ニューヨーク州

〈見処〉
①ウォール街を出し抜け!
 世界金融危機を予見した実話

何も知らないことが厄介なのではない。知らないことを知っていると思い込むのが厄介なのだ。(マーク・トゥエイン)

・『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、2015年に製作されたドラマ映画。原題「The Big Short」は、手元に株がないまま先に売って、決済する時に株を買い戻してその利ざやで儲ける「空売り」を差す。
・本作の舞台は2005年のニューヨーク。金融トレーダーのマイケルは、住宅ローンを含む金融商品が債務不履行に陥る危険性を銀行家や政府に訴えるが、全く相手にされない。そこでCDSという金融取引でローンの価値が暴落したときに巨額の保険金を受け取れる契約を投資銀行と次々に結び、ウォール街を出し抜く計画を立てる。
・金融市場が「住宅市場の景気は永遠に続く」幻想を信じて疑わないなか2008年、住宅ローンの破綻に端を発する市場崩壊の兆候が表れる…。
・本作は『マネーボール』の原作者マイケル・ルイスによるノンフィクション「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」を原作とし、2008年9月の投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻から始まった世界金融危機「リーマン・ショック」の兆しを読み取った投資家たちが、どのようにして巨額の利益を上げたのかを描き出している。

②解りやすく伝える使命
・本作では、難解な金融システムや商品に対する、鑑賞者の理解促進のため、住宅ローン利用者の実態や、ウォール街の欺瞞的な振る舞いが印象的に描かれている。
・また、作中のキャストが鑑賞者に語りかける「第四の壁」による補足説明に加え、新たな金融商品が登場する度に、マーゴット・ロビーやセレーナ・ゴメスが解説員として登場。難解なテーマを万人に理解させるような仕掛けがなされている。
・これらの「解りやすく伝える演出」に対して、本作はアカデミー脚色賞を受賞している。

③どうせ復習するならば…
・上記②を持ってしても、途中離脱の可能性が高い作品。であるならば、必要最小限を理解し鑑賞すると、愉しみが増すはず。

◆サブプライム・ローン
低所得者向けの住宅ローン(不動産担保融資)。アメリカでは「住宅」は値上がりが続く「資産」として、将来見込まれる転売益を前提とした甘い与信審査にて、ローン応諾がされていた。

◆MBS(モーゲージ債)
住宅ローン(不動産担保融資)の債権を金融証券化にしたもの。当時は堅調な投資商品として認知されていた。

◆CDO(債務担保証券)
サブプライム・ローンやMBSを混ぜ合わせられた金融商品。様々なリスクランク債権が組み合わさっていることから、リスク分散と高いリターン率を併せ持っている。

◆CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
毎月保険料を支払い、CDOが紙くず当然の株値となった際に保険金が得られる権利。
金融危機が発生時にCDO(債務担保証券)を空売りするために、新たに作られた金融商品。

④結び…本作の見処は?
◎: 非常に難解なテーマを「第四の壁」の手法にて、丁寧に説明してくれており、オスカー脚色賞の評価に頷ける。
○: リーマンショックに対する「勝ち抜け」を単なるマネーゲーム(金儲け)とはせず、800万人が失業し、600万人が家を失った事実に対する道徳観も描かれている。
▲: 全世界の金融秩序を崩壊させた事件を万人に判るように残さなければならないが、それでも金融に疎い人には一定の脱落者は致し方ない作品。
▲: ポスターなどの本作のプロモーション
は、クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットによる4名のみのマネーゲームとしているが、実際には多くの登場人物を描くアンサンブル作品。
×: 邦題は、本作の主旨を表してない。
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