140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ハーモニーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ハーモニー(2015年製作の映画)
4.0
気持ち悪いほどユートピア
行き過ぎてディストピア

戦争とウィルスの蔓延を経て、健康を管理することで意識高い系管理国家になった未来の話。

とにかく気持ちが悪い。
未来都市の造形が意識高い系で鼻に付く。

管理国家による優しすぎる、過保護すぎる未来社会。そこで起きた集団的事象。これが大きく波紋を呼び、意識に対するテロ行為となり、その意識自体の封じ込め平和を取り戻そうとする。

ゾクゾクします。
出てくる奴ら鼻につきますし、魅力的で、モノローグ多用によるスローペースなストーリーの進行が鈍重にも感じます。

しかしこれは私のハートにスマッシュヒットでした。

集団的事象の一部を管理されているがゆえにPOV方式で見られるという斬新な演出もあります。
スローペースにスリリングな進行ですが、結果として目指す世界が意識管理。映画「リベリオン」のような感情を意図して欠如させて平和を得よう、幸福を得させようという客観的ユートピア、主観的ディストピアへ歯止めが効かなくなった行く様が面白いです。

スローペースながらも大きくスリル性をもたらすのはキャストの演技。

ヒロイン役は沢城みゆき。
モノローグ多用の中、オーバーアクト気味で鼻に付くもののそれが語りで隙間を埋める本作では良い方向に機能しています。

そしてジョーカーポジションの上田麗奈。正直彼女の演技を聞くために視聴いたしました。
スリリングに感情を殺して淡々と語る何か得体の知れなさを醸し出す演技にハート鷲掴みされました。監督も彼女の演技面においての異常性に惹かれてキャスティングしたとかなんとか言われてますがドンピシャリとサイコパシーでポエミーな役柄にはめ込んできています。

未来造形は既視感以前に怒りが湧き出るような気持ち悪さですが、キャラ同士のやり取りのスーッと懐に入り込まれるような甘くキツい感覚がたまりませんでした。

万人受けはしないと思います。