140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ヴァレリアン 千の惑星の救世主の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.0
”大人のお子様ランチ”

大人になって思う。
ご馳走ってなんだろう?
家系ラーメンは好きだが
あれはロマンでありご馳走ではない。
回らない寿司?
いや、あれは板前の手さばきに抱かれる時間。
高級レストランで食べるフルコース?
いや、雰囲気で胃もたれしてしまうぜ・・・

お子様ランチなんてどうだ?
ハンバーグにエビフライ
スパゲッティにミートボール
チキンライスの上に聳える国旗

大人になったらお子様ランチが語る
食のエンターテイメントを味わえないのか?

大人だって”食の冒険”ことお子様ランチではないか?

「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」はそんな映画だ。

冒頭、デビット・ボウイの「Space Oddity」が流れる中、僕らの夢だった宇宙開発が未来に向かってあくなき探究を貪るように発展していく様。徐々に宇宙ステーションは巨大化していき、万国の宇宙飛行士が発展に加わっていき、そして地球外生命体と握手を交わし、人類が遥か先の夢のステージへ向かっていく。ここですでに涙が出た。最高のオープニングだ!これは「スター・ウォーズ」にはない地続きのSFアドベンチャーなのだ。映像化は「スター・ウォーズ」が早く、何より時代のパイオニアとしてレジェンドとして映画界に燦然と輝いている。しかしあの映画は地続きではない。遠い遠い宇宙の話だ。これは冒頭5分で我々が生きることを貪った末にたどり着く世界なのだという希望をくれた。だから涙が出た。

そんな壮大な世界から地続きの先にあったのはチャラ男と美女のラブストーリー?ズンドコ冒険劇?正直、頭には?でありこの映画はダメなのか?と厳しい目線が画面に向かったが、いやこれは見捨てられない愛すべきボンクラ美男美女映画を壮大な世界のミニマルなセカイの冒険活劇じゃないか?

ひたすら映像美のドラッグでクラクラさせられ、ボンクラな逃走劇にジト目必須になりながらも、ガジェットとガバガバなミッション、そして追跡劇に回り道に寄り道にけもの道。多くの道が行く先に待っているのは、ヴァレリアンのローレリーヌへの求婚が届くかどうかという、宇宙の危機とは程遠いような個人事情。でもその逃げ道や回り道や寄り道が最高に楽しいんだ。寄り道した店で出てくるリアーナの無駄に長いダンスシーンなんて、巨額の富をつぎ込んだSF映画とは思えないし、悪役の狼狽もヨーロッパコープの威信の欠片も見えない。アニメのような幼稚さに「アニメじゃない」映像美を心底どうでもいい壁を突っ切るシーンにリソース回したりするわけだが、最後に帰着する本作の”愛の道”という万能なパワーと主人公の成長が世界=セカイでリンクして、良いときも悪いときも受け入れる船出に花を添えるのだから、バカバカしく肩の力を抜いて、そして莫大な負債を抱えたリュック・ベッソン流「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」なのだ。太陽が凍り付いてもどうか彼らだけは消さないで!