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ヴァレリアン 千の惑星の救世主のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

3.8
ブレードランナー元ネタで知られるメビウスなどを世に送り出したフランスのバンド・デシネの同名コミックを実写化。
あのスターウォーズや2001年宇宙の旅のディスカバリー号のデザインにインスピレーションを与えた、宇宙を舞台にした物語の具現化の先駆的とも言えるこの作品は、リュックベッソンが20年も前から製作を考え、アバターが登場するまでは、映像化が困難だと考えられていた。

フィフスエレメント、メビウス(ジャンジロー)ファンとしてハードルを設けたところ、技術が追いついた今だからこそ可能になった作品の持つ圧倒的な視覚芸術、世界観がまるごと飛び込んでくる感覚は、本当に素晴らしい映画体験となった。

超映画映えしそうなワクワクを膨らませるアルファステーション、独自の文化を持つ魅力的な惑星の数々。
ここ以外では絶対に見られない異世界の文化や別宇宙が存在し、目に嬉しいビジュアルに無限に広がるディテールなど、この世界観を提供してくれただけでもう満足です。

アカデミー視覚効果賞あたりに絡んでないのが不思議でならない。


中でも、目新しいエスタブリッシングショットを駆使して、観客をいざなうオープニングは素晴らしい。
デヴィッドボウイのあの曲に乗せて、75年の実録映像、(現実)から一気に仮想歴史へと映画的マクロへ広がっていく高まりが超気持ちいい。
一応の解釈として世界観の宣言を納得もできる。

前半は特に、長回し+トラッキングショットで位置関係を把握しやすく、市場のチェイス場面でも、安易にカットを割らず二つの空間を上手く演出し、スリリングに仕上がっている。

映像以外でも個性が爆発した種族のキャラがより本作のリアリティラインを決定づける。
推しキャラが人によって分かれそうなくらい魅力的なので、MCUくらい知名度があればグッズとかも超儲かりそう。

上映時間の前半、半分は文句なしの最高のスペースオペラとなっているものの、全体的な感想として、かなり寄り道をした結果、シャマラン方式に物語がどんどん逸れて、どうでもいい方向に着地していく。

映像、最高
物語、メッセージ性、 最悪
な塩梅でアンバランスにも程があるくらい勿体無すぎる。

前半の丁寧なプロットとは比較にならないくらい雑な展開に転がる。

コーテックスクラゲの意味不明な浸透作用やリアーナのキャラの飼い殺し感。
パール人があんな短時間で惑星の成り立ちを理解し複製までたどり着けるとは考えにくい、そもそも物語のメインの作戦自体ご都合主義でオチに呆れた。

これだけ寄り道の面白さを携えているなら、思い切って2部作にして脇キャラの掘り下げや、ギミックの使い回しによる伏線を効かしたアクションなんかも可能になりそう。
アイゴンサイラス一派も後々合流して三つ巴の展開とかできたんじゃないかとか、宇宙を股にかける主役2人にもっと魅力があれば、、、全体的に物足りない。


ヒドイストーリーを補えるほどの映像だったか、が評価の分かれどころ。

賛否分かれそうだが、Duneのような悲劇は繰り返されなかった。
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