るるびっち

アクアマンのるるびっちのレビュー・感想・評価

アクアマン(2018年製作の映画)
3.4
アンコのない餅のような作品。
餅の表面には、きな粉やゴマやチョコなど色々トッピングしている。
冒険アクション映画では主人公は大抵、前半で強敵と闘い一度負ける。
その後、修行や冒険を経て成長して勝つようになる。
なぜ負けるのか。単に弱いからではない、主人公には決定的な何かが欠けているからだ。その何かを冒険や旅の中で身に着け、自分の闇や盲点に気づかないと強く成長はしない。

例えば『ブラックパンサー』でも主人公の王子は敵役に一度負ける。王子は自分たちだけ豊かさを独占しているという負い目・矛盾を葛藤として抱えており、肉体的だけでなく精神的にも敵に叶わないのだ。

主人公が抱える矛盾・葛藤・盲点・トラウマ、それらが冒険や旅の中で埋められて初めて彼は敵に勝てるヒーローに生まれ変わるのである。
しかし、本作には主人公が抱える葛藤が希薄だ。
だからアンコのない餅だ。
アクションがいかに派手でも、それはきな粉やゴマが沢山ふりかかっているだけで、真のカタルシスには至らない。人物が自分の中の何かを再発見して生まれ変わる。それこそがカタルシスにつながるのだ。
「アーサー」だからって、あっさり剣代わりの銛を抜くのが弱い脚本だ。
一度は抜けなくて自分は王の資格がないと絶望するんだよ。観客もアーサーって名前だから抜けると過信して裏切られるから、逆に絶望感が深まるんじゃないか。
一度どん底に落ちて、初めて自分の闇と向き合って光を見つけなきゃいけないんだよ、冒険もののセオリーは。大抵そうじゃん、映画観たことない監督なの?(いやいや、ジェームズ・ワンだからというツッコミ待ち)

海底シーンやアクションが良いので(後半飽きるけど)、つまり餅とか表面の皮の部分が良いのでそんなに問題視されないが、スクリプトドクターに掛けた方が良い作品だと思う。明るいからDCとしては良い方。
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