河豚川ポンズ

シャザム!の河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

シャザム!(2019年製作の映画)
4.0
ヒーローになりたいヒーローな映画。
前後がコナンやらアベンジャーズやらに囲まれてて少し不憫だけど、そもそも何故に真正面きって対決みたいなスケジュールにしたんだろうか。

幼いころに母親とはぐれてしまい、孤児となってしまったビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)は里親の元に預けられるも、何かしらの問題を起こしては転々としていた。
転々とする中で彼は自分と同じ姓の家を訪ね、離れ離れになった母親を探していたが、警察に捕まってしまい、自分と同じ孤児が住むグループホームへと送られる。
足が不自由なヒーローオタクのフレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)、抱きつき癖がありおしゃべりなダーラ(フェイス・ハーマン)、ゲーマーで口の悪いユージーン(イアン・チェン)、無口で筋トレオタクなペドロ(ジョバン・アルマンド)、一番の年長で大学進学を控えたメアリー(グレイス・フルトン)、そして里親で元孤児のビクター(クーパー・アンドリュース)とローザ(マルタ・ミランズ)に囲まれて暮らすことになったビリー。
それでもやはり馴染めそうにないビリーだったが、通い始めた学校でフレディがいじめられているところに出くわす。
初めは無視しようとしていたが、母親がいないことを馬鹿にする言葉を聞き逃せずいじめっ子に喧嘩を売る。
そこから何とか逃げ切り地下鉄へと乗り込んだビリーは、突然古い宮殿のような場所へとたどり着く。
全く何が何だか分からない彼の目の前に、魔術師を名乗る杖を持った老人(ジャイモン・フンスー)が座っていた。
そしてそこでビリーは言われるがまま、神々の力を持ったスーパーヒーロー”シャザム”(ザッカリー・リーヴァイ)へと変身する能力を老人から授かるのだった。


「ジャスティス・リーグ」に登場したフラッシュやサイボーグ、原作コミックでのオリジンメンバーのであるグリーンランタンを差し置いて、まさかのシャザムの単独映画化。
神々の力を持ちながら、中身はただの14歳の子供という個性の塊みたいな設定でコミカルなキャラクター。
原作コミックではキャラクターとしての歴史はぶっちぎりで長いものの、いまいち活躍の場は少なく、アニメシリーズなどでようやく人気が出始めたという何とも言えない立ち位置。
そんなもんだから一体どんな映画になるのかと思ってたけど、しっかりとキャラクターに合わせて適切な物語を用意することで、唯一無二の新しいストーリーが生まれていた。
主人公のビリーは孤児で、「家族」というものに羨望を抱いて生きてきたというのは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」とテーマだけど、ビリーは授けられた魔法の力で大人になれてしまうというところは大きく異なる。
子供がガワだけ大人になるというアイデアはトム・ハンクス主演の「ビッグ」が真っ先に思いつく人も多いだろうけど、そこにヒーローという全く異なる要素をミックスされている。
だから部分部分では色んなアイデアの集まりでも、最後に出てきた物語は全く真新しいものだったし、全体がコメディ映画だったとしてもしっかりヒーローとしてのカッコよさは外さない。

ビリー個人の話として見てみると意外と真面目というか、普段はコミカルで押し通してる分、シリアスパートに入るとめちゃめちゃ重い。
そもそも3歳の時に母親とはぐれてから、10年以上自分と同じ姓の家々を訪ね歩くってところからすでに健気すぎて泣けてくる。
しかもそれに関するあることが明かされたときには、これならまだ知らない方が良かったとさらに虚しくなってくる。
親周りの話の重さもだけど、同じ孤児のフレディもどっこいどっこいな過酷さだし、彼の心中が分かるシーンは何とも言えない。
今までのDCならドチャクソ重い展開をぶっこんで来そうなところだけど、今回はコメディであることに命を懸けてるようなのでそこまで暗くならずに軽快に進んでいく。
ホームドラマ×ヒーローものとしては十分すぎるほどの出来栄えだけど、ヒーローアクション映画としてはいまいちな感じが否めない。
そりゃあそもそもスーパーマンと似通ってるんで大昔に訴訟起こされたぐらいだけど、アクション面までスーパーマンやその他どこかで見たようなアクションをされてしまっては個性がない。
コメディ映画だからと開き直るのならそれでもいいかもしれないけど、やはりそこがあってこそのヒーローとしての個性でもあるし、そこはやっぱり何か新しいものを見たかったなあ。

自分は字幕で観たけど、吹替の方は…まあ……うん、楽しめる人だけで楽しめばいいんじゃないかな。
あんなわけのわからんものを褒められるような感性した人と、少なくとも自分はお近づきになろうとは1ミリも思わないけど。