140字プロレス鶴見辰吾ジラ

シャザム!の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

シャザム!(2019年製作の映画)
4.1
【俺たちはファミリー】

見た目は大人!
中身は子ども!
という煽り文句から
最近よくあるギャップ萌えのヒーロー映画か?と思わされ、おまけに吹き替え版を福田雄一監督が首を突っ込んできて、「う~ん、不真面目もしくはビジネス映画。」と腰が重く感じる映画というイメージをもって公開された「シャザム!」。

いやいや、これ面白いぞ!
いやはや、エモいぜ!
と、ツボを突かれるヒーロー映画。
どうしたDC!?最近、おまえ元気だな!

映像質感はTVドラマレベルの安っぽさが全編に漂いますが、その中身はまず“孤児”をキーワードにした孤独→家族の物語。特に主人公が孤児になる背景を主観と客観視点で序盤→中盤で描く当たり、是枝監督が世界に放った「万引き家族」的な重さがある。そして孤児たちのグループホームは孤独で歪な人生を歩んだ者たちが実にポリコネよろしく多種多様なのですが、それは明らかに現在アメリカを象徴しています。「ズートピア」みたいな煌びやかさから行くとゲンナリする空間でありますが、昨年私が年間映画ランキング2位に選んだ「僕の名前はズッキーニ」の質感と被ってきて、親を失うという個人のアイデンティティの危機の集合体として、そして多様性として目が離せなくなります。誰にでもハグしてしまう黒人少女の設定と特徴が背景を想起させてきますし、主人公の相棒役との最初の会話でも明らかな歪さが受け取れるので、序盤からのキャラ紹介の立ち上がりは非常に良いです。本作が偶然スーパーパワーを手に入れた主人公たちのコメディではなく、それをきっかけにした家族となっていく物語なのが胸を打ちます。同時並行して存在するヴィランもまた親からの愛情や評価という点で闇堕ちするのに相応しいキャラクターですし、七つの大罪を操れるというのも後半に向けてミソになってきます。

設定や背景説明など手際よく進めてのアメリカの問題児的いじめっ子をスーパーパワーでぎゃふんと言わせる描写や、それこそ超万能薬QUEENの「Don’t Stop Me Now」をバックに能力実験するシーンは本当に素晴らしくて泣けてきます。能力に対しての責任を物語に投下して山あり谷ありと盛り立ててからのクライマックスは、数多くの作品が終盤に持ち込む痛みを分かち合うからこその共鳴で彩ります。最近だと「スパイダーバース」に近いでしょうか?「IT」や「GOTG」にも見受けられますが、ここで彼らが血のつながり・束縛を越えた存在となるのは圧巻。そしてそれ自体が彼らの未来への投影だからより一層胸にグッときます。ここで例のあの子がサンタさんに話しかけるシーンとか細かく胸を振るわせますよ。

そんなこんなで確実に宣伝以上の傑作なわけですよ。
「シャザム!」は。
みんなで叫びたいですよ「シャザム!」って。
劇場でみんなの心は「シャザム!」でひとつに!