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BOYS/ボーイズのNMのレビュー・感想・評価

BOYS/ボーイズ(2014年製作の映画)
3.8
オランダの恐らく初夏あたりの美しい自然が爽やかな印象を残す作品。
大ヒットした『君の名前で僕を呼んで』を思い起こさせる作品だが、本作のほうがその3年前に制作されている。


緑豊かな町で、陸上部の活動に打ち込むシーヘルは15歳。
思春期真っ盛りでもある。

父と、年の近そうな兄との三人暮らし。基本的には仲良し。母親はいない様子。
兄は既に働いており、バイクを乗り回し若干行動がチャラい。
シーヘルは兄とつるんでいるグループの中の女の子と仲良くなり、恋人状態に。といっても告白したとか交際を申し込んだとかではなく、みんなしてるから何となくノリでイチャイチャする関係というだけの様子。

シーヘルを含め、部で四人が選抜選手となった。この四人でリレーをすることになる。
その中のマークは、シーヘルにちょくちょく声をかけてくる。
マークは速く、ガタイも良い。

ある日四人は練習終わりに森に泳ぎに行って遊んだ。
残ったシーヘルとマーク。
不意にキスを交わす二人。

シーヘルは「僕はゲイじゃない」と伝えて別れた。マークは「そうだろうな」と笑った。
シーヘルは帰り道、別に嫌な気分ではなかった。
翌日からも何事もなかったように接し、また友人として仲良くできた。

部活の合宿へ。
シーヘルとマークは深夜自転車で抜け出した。
今度はシーヘルの方から首筋にキスをした。
もつれるように夜の浜辺を駆け下りる二人。空には無数の白いかもめ。
そのまままた宿に戻ったが、シーヘルの親友ステフは深夜二人が抜け出したのを見かけていた。しかし声はかけない。何かを察した様子。

帰宅したシーヘル。親友とダブルデートへ。
夜の遊園地。
偶然にもそこでマークと出くわす。
黙ったまま複雑な、でも確かに責めるような表情でシーヘルを見つめるマーク。
確かに客観的に見ればこれでは二人の恋人を掛け持ちしているような状態。

マークは練習でシーヘルに冷たく当たる。バトンをわざと落とす。
「彼女がいるのか」と問い詰められる。
とりあえずまた泳ぎに行く約束をした。
しかし兄が仕事を先月からクビになっていたことが発覚、父に詰め寄られ兄は出ていってしまう。
仕方なくシーヘルは兄を探し行く。
辺りはすっかり暗いが、兄は今度はどこからか車を手に入れてきた。
お前も乗れよと言われシーヘルは仕方なくその車に乗る。この兄はキレやすいしグレかけていて、特に自暴自棄な今は一人にしておくわけに行かない。

すると夜道を帰る途中のマークに出会ってしまう。
約束をすっぽかされた状態のマーク。マークから見れば自分を置いて楽しく女の子たちとドライブしているように見える。
シーヘルは謝ることもできずそのまま別れた。15歳の彼にこの状況で最適解を出すのは難しかったようだ。
結局車を降りとぼとぼと一人で帰ったシーヘル。

翌日、大会。
マークとの仲がこじれたまま。マークは目も合わせない。
シーヘルは謝ったが、もちろんマークは彼に不信感を持っている。
レースの時間。会場は満員。父と兄も駆けつけた。
接戦。アンカーのシーヘルが鍵を握る。
マークはバトンをきちんと渡してくれるのだろうか。レースとは別の緊張も走る。

家族と友人ステフで打ち上げの夕食。
マークはあのレースが終わった今、自分の気持ちが固まった。
またしても何かを察し、黙って微笑む友人ステフ。


まあどちらかと言えばシーヘルが悪いよなあと思って観ていたが、若く、且つ同性と異性との間で迷っているような状態ではじゅうぶん起こりうるトラブル。
というか自分が誰を好きなのか、どういう趣味なのかは、大人でも確証などない人が殆どだろう。
主人公がいい人だったので、なるほどこういう環境もあり得るしこの人が悪人とは一概に言い切れるものじゃないなと思えた。
この感情が友情なのか愛情なのか、迷うことは普通のことだろう。悪気はなくとも他の人に迷惑をかけてしまうこともある。
単に恋の話というよりは人として一歩成長する過程を見れる作品。トラブルがあっても大人のようにきっちり話し合わずそのままやり過ごそうとするのはとても子供らしいなと感じた。

また親友ステフ君が素晴らしい。
まず勘が鋭い。これは周囲に気を使い常に観察しているからこそ。
そしてその予想の真偽を敢えては確かめない。聞きかけはしたものの、真相がどうであれこういうことは本人が言うまで待つのが正解だろう。
彼の態度は勉強になった。
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