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カン・フューリーのkuuのレビュー・感想・評価

カン・フューリー(2015年製作の映画)
4.0
『カン・フューリー』
原題 Kung Fury
製作年 2015年。上映時間 31分。
デイヴィッド・サンドバーグ(『ライト/オフ2016年』や『シャザム!〜神々の怒り〜2023年の監督)が脚本・監督を手がけた2015年のスウェーデンの武侠・戦隊モノ・コメディ映画。
1980年代のマーシャルアーツやポリスアクション映画にオマージュを捧げた作品。
カン・フューリーが巻く赤いバンダナは、『ランボー2』(1985年)や『ベストキッド』(1984年)といった1980年代の映画でよく使われたヒーローの型やけど、むしろゲーム『Street Fighter II』のリュウって感じかな。
懐かしのアーケードゲームも見れた。
主演はタイトルロールのサンドバーグ、ヨルマ・タッコーネ、レオポルド・ニルソン、そしてデヴィッド・ハッセルホフがカメオ出演している。
今作品は、2014年初めにキックスターターを通じてクラウドファンディングを実施し、当初の目標額20万ドルを上回る63万019米ドルに達したが、長編映画の目標額である100万ドルには届かなかった。
2015年カンヌ国際映画祭の監督週間部門に選出され、イギリスの『Rate Me』に敗れて上映されたそうな。
健気にもサンドバーグ監督は警官の制服を1着しか買えなかったため、苦肉の策として署内のシーンを撮影する際には、エキストラをそれぞれ別々に撮影し、それを合成したそうな泪(笑)。

さっき、フィルマフレンドから教えてもらい早速視聴。

今作品は80年代にインスピレーションを得たサクッと31分のとても面白い映画(面白いか否かは二分されるとは思いますが)で、いろいろな意味でとても奇妙な短編映画でした。
主人公がヒーローになる由縁がもうハチャメチャ。
雷に打たれるってのは、確率は100万分の1とされ、世界での年間被害者数は1000人ほどやし無きにしもあらずやけど、その後に、コブラに噛まれる。
どんなけやねん。
コブラに噛まれる必要性あんのかいっ。
その災厄にあった平凡な一銭ポリ(警官)は、ある啓示を受け、選ばれし者である彼だけが学べる強力なカンフーを伝授される。
なんか書いてて良くわからんようになります。
ホンでもって、新たな力を手に入れた彼は、犯罪がはびこるマイアミの街に正義をもたらすためなら手段を選ばないワルのヒーローとなる。
しかし、倒れた友人の仇を討つため、時間を遡る危険な冒険に乗り出さなければならなくなる。。。

今作品は、映画全体を通して、微笑をたたえ、時にはバカ笑いをさせてくました。
それだけでなく、期待をはるかに超えて、完全に驚かせてくれた。
脚本・監督・主演のデヴィッド・サンドバーグ監督は俳優としては新人やろけど、アホなことを見事に振り切って演じてる。
監督としてもB級感を溢れさせる作り方を熟知しているって感じた。
映画と同じ名前の彼のキャラは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティと、勧善懲悪のフルボッコっぷりと不死身のスティーブン・セガール、そして、ニンジャタートルの素早さ(出で立ちはリュウにもみえるし、『ナイトライダー』のマイケル・ナイトに見えなくもない)を掛け合わせたような完璧アホなキャラ。
ちなみにマイケル・ナイト役のデヴィッド・ハッセルホフが声のカメオ出演してた。
もし、カン・フューリーが現実の町に歩いてたら即通報🚨。
しかし、今作品の最大の強みは、決して深刻になりすぎず、三振覚悟で豪快に振り切って、愉快で意図的なチープさを自認し続けていることだと思います。
メイン・タイトルの完璧に年代物のヴィンテージ・ルックを目にし、映画が奏でるオールドスクールなサウンドトラック(スウェーデンの電子ミュージシャンで、シンセウェーブのジャンルを広めた数多くのアーティストの一人として知られてるミッチ・マーダーの爽快な曲など)を耳にした瞬間、何か特別なものに乗り込もうとしていることがわかる。
レトロなゲームと電子機器への賛歌だけでも、ノスタルジアの壮大な爆発を味わうために見る価値があった。
この短編インディーズ映画の製作には、かなりの時間と情熱が注ぎ込まれていることうかがえる。
アホなことでも真摯に取り組む姿勢には脱帽かな。
サンドバーグ監督は、ヴィンテージ・アクション映画とVHSテープの時代への大げさなオマージュという、80年代のビデオっ子、フリークなら垂涎するような巧みなレシピ(80年代キッズの夢を瓶に詰め、数年間寝かせて滲み出させたエキスは多くの色彩を得てる)を作り上げ、20数年前に履き古したマジックテープのシューズを履いたように、それを叩きつけて走らせることに成功してると思います。
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