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イコライザー2のCureTochanのレビュー・感想・評価

イコライザー2(2018年製作の映画)
3.8
いい役者による芝居が目一杯に増えていて、かなり違う続編になっていた。ただ、豊富なドラマシーンと、デンゼル・ワシントンが優秀な役者であることの副作用として、主人公のキャラクターがさらに奇妙になった気がする。バットマン的な、そのことだけに頑張りすぎみたいな感じ。スーントの時計は私も持っているが、殺しのタイムを測っちゃうイチローみたいな殺し屋を掘り下げてどうするのか的な?

序盤で、本屋さんの女の子に「シー!」ってするくだりは、白人の顔の見分けがつきにくい日本人には、あれが誰かわからないままの人もいるのじゃなかろうか。また、自分の歯ブラシに近づくことのできる人間には優しくしろ、という老人のアドバイスも字幕ではわかりにくい。嫌いな人の歯ブラシでトイレを磨く・唾を吐く、という発想は西洋人がよくするもので、Mr.ビーンにもあった。

一番、わかりにくかったのは、不意に訪ねてきた元上司?の女との会話だった。トルコの件はhappy endingだった、でも「性交」じゃない、という字幕や吹き替えは、決して悪くない。よくがんばった。happy endingという言葉は、マッサージの最後に追加料金でシゴいてもらうことをさすらしい(マッサージ師はアジア人の女と相場が決まっている)。ここは男女で下ネタをやりとりすることで、二人が親友であることを表す重要なシーンだ。ただこのあとのディナーをおごるの、おごらないの、というくだりも、デンゼル・ワシントンの苦笑いからして下ネタだと思うんだけど、意味がわからなかった。weasel out=責任から逃れるに、シモの意味があるのだろうか(ペニスが抜けること、みたいな記載はネット上にあったが・・)。いずれにせよ最後は、亡くなった奥さんの誕生日に一人は寂しいだろうと、わざわざスープを持ってワシントンから飛んで来てくれたことがわかる。下ネタでもいいから気の晴れる話をしようとしていたのだ。それが、あないなことになるとは・・と、しかし、ここからが本作の物足りない点になる。

前作も、映像・音楽とも素晴らしくアップデートされていたが、中身は古いドラマであり、要は必殺仕事人である。独りだから藤枝梅安ってことになるが、カッコよさに関しては緒形拳ほどではない。緒形拳にはもっと色気というか世俗的、人間的な佇まいがあり、作り話を引き締めていた。イコライザーの主人公は、バットマンなんかとも同じで、人間味がなさすぎる。だから悟りを開きすぎっていうか、大事な親友を殺された怒りが、あんまし伝わってこないのである。殺され役たちが、むざむざやられに来る接待ゴルフに見えてくる。最後の勝ち方も、はじめからマッコールのほうが強かっただけみたいだが、強さではなく正しいから勝つっていうひねりがあれば正統的だった。相手もプロだからマッコールには勝てないってわかるし、もっと万全な態勢でやるはずだべ?むしろ相手の方が強いけど頭や運で勝つ、っていうボンド的な面白さもある。そこを工夫する気がないのか。

最近のこういう映画って、なんかカァちゃんの作るカレーが、いつからか考えすぎて不味くなるプロセスを辿っているように見える。どうしたら面白いかはわかってるけど、新機軸を探さずにはいられない。このシリーズでは主役のキャストがそれだ。いい役者には違いないし、芝居そのものは楽しめた。あと最後の大バトルの終わり方にも、確かに陳腐さは感じなかった。でも、目的であるカレーがそこまで旨くなってないのだ。女をマワした金持ちの若者たちを成敗するシーンの最後、五つ星の評価をしろよって強要する、そして実際にアプリが星を表示する。主人公はそれを目で確認する。そのくだりがサッパリ面白くないのがデンゼルワシントンの限界。たとえば本屋の女の子にシーってする場面にしても、おっさんの可愛げが出るであろうブルース・ウィリスとかブロスナンで見てみたい。96時間、はそこが上だったのがヒットした理由だろう。あちらはRottenの観客スコアが85%、こっちは60%と、厳しいな。

あと「トイ・ストーリー4」を気に入らなかった人たちが言っていたようなことを感じたのが、本作が途中で「必殺仕事人」という枠を捨ててしまった点である。恨みが自分自身のものになって、しかもそれを明言しちゃったから。

余談だが、襲われた女はマス・ジェネラルに連れて行ったっていうセリフがあるんだけど、これはマサチューセッツ総合病院のことらしい。ハーバードの医学部を構成する超有名な病院だから、このセリフは日本で言えば、さしずめ「東大病院で胃洗浄してる」と言ってるのと同じ。まぁそこに、腕と脚が逆方向に折れてるメンズを追加で送り込む結果になったわけだが、実在する病院名を言うのが面白い。
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