”バードマン4”
もとい…
”クロスロード”
縦の糸はあなた
横の糸はわたし
交わったのは、ピーター・パーカーとトニー・スターク。織りなす糸はスパイダーマンとアイアンマン。
ローカルヒーローからスーパーヒーローへ!というメジャーになるための物語でなく、1人の少年の成長が青春を切り取ったスクールライフの中から飛び出してくるというのが良い。何でもかんでも超大作にさせがちだが、地に足ついたスパイダーマンの心の成長を微笑ましく見守る親や友人の視点でこの映画を楽しめるのが何より。安易に才能溢れる若者の英雄譚とせず、未熟だからゆえにいじめられ、恋をして、自己顕示欲が暴れてと陰を踏めば、ジョッシュ・トランクの「クロニクル」の二の舞にしかならない不確かさが、友人やメイおばさん、そして師となるトニー・スタークによって陽へと手引きされていく。スパイダーマン大活躍を期待すると未熟で間の抜けたアクションに拍子抜けし、スパイダーマンの対応不良による二次災害にもこっちの気持ちも焦るばかりだが、トニー・スターク自身も自身の過ちから大規模な恨みや被害を産んでいるわけだから、未熟な少年ヒーローを成長させたいと願い、育てたいと思う親心が気恥ずかしが心地良い。
監督ジョン・ワッツの前作「コップ・カー」でも描いた少年の成長と父親不在の中での未熟が揺れる様をハイスクールへとステップアップさせ、ヤキモキさせながらも見つめてくれる人の大切さを過度なエモーションなく切り取っている。
アクションに関しては、スパイダーマンのビルとビルの間をジェットコースターのようにアクロバティックに駆け抜けるライミ版の爽快感はなく、こじんまりとしたCGがチョコチョコと動き回っているようで肩透かし。
アクションの壮大性より、少年が大人になるきっかけを見せることに集約させたことで学園ドラマ内のヒーロー映画であり、「パワーレンジャー」と同ベクトルの嬉しさがあった。
敵役のヴァルチャーを演じたマイケル・キートンは、ティム・バートン版「バットマン」から「バードマン」と歩み、日常に潜む闇ある男の優しさと狂気性を、終盤に差し掛かるある車内での会話シーンに解き放ってきた場面で大いにシビれた。BGMも相まって動くことの出来ないプレッシングを感じられて印象的だった。
アクション目当てより青春学園ヒーロー譚としてのスパイダーマンは未熟だからこその愛嬌が詰まっている。
スターク性のスパイダースーツのスタイリッシュな解釈と素顔にスーツという特撮ヒーロー的エモーションを感じるシーンが要所で挿入され満足だった。
スパイダーマンの帰りを待つ。
忍耐とともに。