平野レミゼラブル

劇場版 遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONSの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

4.2
「主役はもちろんこの俺ー!!」
…というCMでの海馬社長の宣言通り、社長の社長による社長のための映画。

そもそも原作での海馬瀬人という人物はその濃ゆいキャラクター性と人気に反して、不遇といっても良い顛末を迎えている。
なんせバトルシティで自身の過去のしがらみから解放されて以降は全くといっていいほど出番がなく、なんか勝手にライバルに前世からの因縁を解消され、置いてけぼりの蚊帳の外の状態で勝ち逃げを食らってしまっているんだもの。
アニメ版では闘いの儀までしっかり観戦し、悔いを残さなかったが、本作は原作の正統続編。
そのため、冥界のアテムへの執着が凄まじく、アテムをバーチャル再現(社長主観による再現のためやたら煽る)したり、千年パズルを組み立てるためだけに宇宙エレベーターを建てたり、地面からオベリスクをドローしたりと大暴走を繰り広げている。
一応企業の社長として私情より会社の利益を優先したり、線引きはしっかりしてるものの、デッキを登録しないと住民票が発行できないという滅茶苦茶な法を敷く様は、本作の敵役から「狂った独裁者」呼ばわりされるのも残念ながら当然と言える。
そんな社長も表遊戯との初のデュエルや共闘を通じてある一つの答えに辿り着く…というか本当に辿り着いてしまったラストは海馬瀬人のエンディングとして完璧な出来であった。

社長があまりにも目立ちまくっているが、表遊戯はというとアテムと別れてからの成長がしっかりと描かれている。
原作では終盤の闇バクラと闘いの儀くらいでしかデュエルシーンがなかった表遊戯だが、彼がアテム抜きに天才的なプレイングが可能なデュエルマスターであることも証明される。
なんせ、対戦相手に一方的な「俺ルール」を強いられた(遊戯王ではよくあること)にも関わらず、1ターン目でそのルールを悪用したハメ技コンボの布石をばら撒くんだからえげつない。
あっそうそう、本作はカード効果確認とか一切なくデュエルがどんどん進行していくけど、元から勝手に「俺ルール」が付け加えられたりマンモスの墓場をブルーアイズに融合させたりする作品なのでそこは考えずに見て大丈夫だ。

他にも闇バクラ誕生の経緯が判明したり、原作だとよくわからないまま体に千年アイテム埋め込むデブになっていたシャーディーがどんな人物だったのかわかったり、シャーディーの謎が増えたり、表遊戯vs社長のドリームマッチでは闘いの儀のリフレインがあったりと原作でやってほしかったことをとことん補完してくれるので満足(サティスファクション)度が総じて高め。
原作読了前提な作りなだけに割とハードルは高めながらも、原作ファン(特に海馬ファン)なら確実にぶっ刺さる要素に溢れている。
オススメ!!