小

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐの小のレビュー・感想・評価

3.7
仕事上の関係が、深い友情に昇華する。滅多にないことだから映画になる。

『老人と海』のノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイ、『グレート・ギャツビー』のスコット・F・フィッツジェラルドといった偉大と称えられる作家を無名時代に発掘し、世に送り出したカリスマ編集者マックス・パーキンズ。

ある日、パーキンズのもとに無名の作家トマス・ウルフの原稿が持ち込まれる。感情のおもむくまま、ひたすら書き連ねる文章に他の編集者は匙を投げたが、パーキンズは彼の天才性を見出し、惚れ込む。

二人三脚で文章を直して出版した処女作『天使よ故郷を見よ』はベストセラーとなり、ウルフはパーキンズに絶大な信頼を寄せる。

パーキンズは家庭を、ウルフは愛人を顧みずに、昼夜を問わず執筆に没頭した第二作も大ヒット。しかし、パーキンズなしでは書けないとの悪評に、ウルフの心は大きく揺れるが…。

名作を世に送り出すことに自らを捧げた編集者と天才作家が出会ったとき、どうしても本を完成させなければならないという、切実さと高揚感を湛えた使命感が生まれ、一心同体となって文章を紡ぎ出す。

そして、「ああ、二人はとても固い友情で結ばれているのだなあ」と得心するラストシーン。とてもよいなあと思う。パーキンズ役のコリン・ファースのそれまでの演技は、このシーンのためにあったのではないか、と思うほど。

編集者と作家の創作活動だから、刺激は少なく、退屈かもしれない。しかし、この映画を観て思う。天才作家と友情を築くパーキンズが手掛けた作品は、心揺さぶられずにはいられないのではないかと。

だから読んでみたくなる、というのを見透かされてか、映画のHP(http://best-seller.jp/)に「パーキンズが手がけた書籍」が載ってます。
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