140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ドント・ブリーズの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
3.9
フォースを信じる者の希望は死なない
フォースを信じない者の絶望は消えない

劇場鑑賞をオススメしたい作品。

エンドロールが終わり、明かりが映画館に灯るとともに聴こえる安堵の溜息を聴き終えてまでがこの映画体験のすべてだった。

盲目の老人宅に、この街から出るための金を手に入れるために押し入った若者たち。冒頭からゴーストタウンと化したデトロイトの街を空撮ショットから見下ろせば、そこに人影。そこへズームアップしていくと…

デトロイトが舞台の作品は、今年初めの「イットフォローズ」そして締めくくりの「ドント・ブリーズ」と忘れ難い衝撃を齎してくれた。

単純明快な設定から、背後に蠢く荒廃した生活と人の心。「闇が深い」とはこのことだろう。そこから剥き出しになった人の本性と宗教観がクライマックスに向けて露わになっていくところは恐ろしいとしか言えない。

タイトルも「息をするな」と見る者を引きつける呼び水となり、演出も銃声後の「キーン」という耳鳴りから、上映中にポップコーンはおろか、飲み物も飲めないくらいに、静寂を要求してくることが、映画にライドする楽しさと恐怖を混在させていた。

ライド感と言えば、序盤のカメラワークがピカイチ。家侵入してからゲーム画面のように蠢くようなカメラワークを用いて部屋のギミックを説明させる演出は斬新で目がこの空間から話せなくなるマジック的な要素がありました。終盤に向け、顔のアップが増えて、圧迫感と周りに気を配りたいが、配らせてくれない緊張感もまた絶妙。

盲目の老人が登場してからのシーソーゲームっぷりは、明るさのあった「10クローバーフィールドレーン」に比べると、縛り付けられるような緊張感とランタイム88分ですら苦痛に思える、「早く終わって欲しい」という圧迫感が全面に演出され、90分ない映画で疲労困憊にされてしまった。

盲目老人に隠された秘密と、その末路に唯一笑えるポイント、上がるポイントが配置されていますが、やはり終始気分が悪くなりそうな圧迫感がしんどい…

生きて映画館を後に出来る喜びは、劇場でしか買えません。