140字プロレス鶴見辰吾ジラ

レディ・プレイヤー1の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
4.2
GW映画12番勝負”第7戦”
※GW中に800レビュー届くのか!?

”夢に向かって翔ぶ準備はいいか?”

「READY PLAYER ONE」
つまり、あなたたちに全員に問われたタイトル。
私はそう感じた。

「将来の夢はYoutuber!」
それならば、youtubeが好きなだけではダメ。
「声優になることが私の夢!」
アニメ、漫画大好き!では壁を突破できない。

オタクが自分の趣味で仕事をすることは
ある種、MADな状態にならねばならない。
好きだけでは足りず、狂気を内に抱えること
私はこう考えている。

クライマックスのある世界の中に投じられるメッセージと新たなルールを説教臭く感じてしまう人もいるかと思うが、私は現実vs虚構への折り合いのつけ方は正解と作中のラストで示される道が正解と思う。しかしながら今作のラストのメッセージが受け入れられるのは、スティーブン・スピルバーグという男の言葉であるからに他ならない。新進気鋭の若手監督が放ったメッセージであれば”スベって”いたことは予想がつく。「未知との遭遇」で家族を捨てて理想の世界の手招きに応じてしまったことを悔やみ、「E.T」にてエリオット少年に悲しみの中、ここにとどまることをさせたスピルバーグだからこその言葉の重みではないかと思う。
※原作と改変点があるらしい。

そしてスピルバーグをトキメキとワクワクを供給するにおいて素晴らしい才能をもった監督と認識しているが、今作は、「JAWS」「激突」のような恐怖感や「未知との遭遇」「E.T」「ジュラシック・パーク」のような場外ホームラン的な火力充分なパンチがあるわけではなく、王道のストーリーにオタクあるあるのネタのオンパレードをキャラクターが口に出して、さらに完全肯定している部分が歪に感じてしまった。途中の「ゴールデン・アイ」のチョップでプレイする話は「うおおおお」と共感したが、これはタランティーノなどの領域ではなかろうか?

しかしながら大いに心が動いた点としては、中盤あるキューブリック作品の劇中内を完コピしたようなゲーム世界の登場が状況を一変させる。キューブリックは完全なる職人監督で自己芸術を崇高なレベルまで熟成し、あらゆるジャンルにマウントをとってボコなぐりする監督だと思っている。逆にスピルバーグは社会派作品を取りつつ、映画という虚構をより多くの人と共有体験としようという心意気ある監督でもあると思っており、「A.I」にてキューブリックがスピルバーグへの”継承”を行っているのであれば、今作の創設者ハリデー=スピルバーグの分身(ジョブズとウォズニャック成分配合)として、彼の後継者を今作のテーマのひとつでもある”翔ぶ”ことをさせようというクリエイターに向けての作品として見ることもできると感じた。

AKIRAのカネダバイク
デロリアンの疾走
三船敏郎とガンダムとメカなアイツ
群衆の中に仕込まれた数々のキャラクター
アタリ製のゲーム機
隠されたイースターエッグ

1度や2度では読み取れることのできない情報量を込めていることと、ストーリーの中で創設者の隠した鍵の探索方法を踏まえて、スピルバーグ自体のクリエイターとしての頂点に対して、挑戦者募集のようなクリエイターたちへの挑発や自己崇拝の考えも反映されたものだったのではないかと思う。

オタクがオタク活動として、消費者の内にひきこもることではなく、”翔んで”こい!というような挑発性も感じられ、クリエイター熱のある人ほど、それに燃えるのではないか?と少しばかり考えてしまったが、かつてレオナルド・ダ・ヴィンチが画家としてのリアルを追及するがゆえにあらゆる分野に精通してしまった事実を踏まえて、「声優になりたきゃ、アニメじゃなくて役者の勉強してこい!」に近い感覚を今作に見てしまった。