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素晴らしきかな、人生のmazdaのレビュー・感想・評価

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)
3.2
最愛の娘を亡くし人生どん底で何にも手のつけられない男の前に『愛』と『時間』と『死』と名乗る3人の人物が彼の前に現れ、それぞれの視点から彼にきっかけを与えようとする話。
超豪華キャストなうえにこの邦題、観たいか観たくないかというよりは嫌でも気になっちゃうような引き込み方だよなあと思う。

序盤の愛、時間、死、それぞれになりきって彼に近づくというのは面白いかも。と思わせたのだが、何がだめって彼等が最終的にどんな影響をあたえ何を残したかあまりにもぼんやりとしてるってこと。
ここまで引き寄せる設定に対してオチがついてこなさすぎじゃないか?彼等なしでもそのうち解決できたんじゃないの?っていうような予想に反するオチ。彼等が主人公を救うのに物語として必要だったのかあまり重要性を感じられなかった。すごいややこしい道のりで遠回りして結末まで来た感じする。

そして何より嫌だったのは詰め込みまくった感動のごった煮みたいな設定。普通に愛と時間と死が、父親をどん底から救う話かと思ったら、絶望の彼を心配する周りの友人達にもそれぞれ愛、時間、死にまつわる問題が実はいろいろあって、結果的に彼等の方が主人公よりもきっかけをもらっている。どれがメインなの?どこを見せたいの?ってなる。感動しそうなポイント詰め込みすぎて結局1つ1つの感動が浅くなった感じが否めない。みんな同時にいろんなこと起きすぎじゃない?いや何も起きない人生なんてないんだけどこんなみんな同時に谷底みたいな人生の瞬間ってある??このごった煮が入り込めない何よりの理由だった。

フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生』は観終わったあとに本当にシンプルに純粋に、ああ人生って素晴らしい、生きてるってすごい、って思わず口に出てしまうような、余計なことを全て排除してそれだけを感じさせてくれるような、それほどまでに素晴らしいぴったりの邦題だと思うのだが、今作を観終わって感じたのはいい話かもしれないけど別に人生って素晴らしい。とはならない。どん底から立ち直ってまた歩みだすことのできた彼の視点で素晴らしいのか、彼を絶望から引き上げることのできた周りの視点で素晴らしいのか、どちらにしろ素晴らしいという感動にまで到達しない。今年の時間がたつと忘れてしまうシリーズベスト入り。。。
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