神戸典

素晴らしきかな、人生の神戸典のネタバレレビュー・内容・結末

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

親友と一緒に会社を立ち上げ、想像力と革新性で会社を成長させたハワード。
人がみな動かされるものとして普遍的なものは、時間・愛・死の3つであると考えて、3つをテーマにし、人々を納得させ、人から愛されるものを作ってきた。
人はみな時間を惜しみ、愛を求め、死を恐れる。かつて3つのテーマを誰よりも信じて疑わなかったハワードが、娘の死によってそのどれもを否定してしまったのだ。

会社の存続の危機に陥ったとき、ハワードはこれまで共に作り上げてきた仲間一人一人に感謝の気持ちを伝え、遂に会社が所有している株を売る事に署名した。
この時のハワードのセリフは涙なしには観ることができない。

最後のシーンでハワードが振り向くと、3人の役者 時間・愛・死が微笑んでハワードを見ている。しかしマデリンには見えない。
これはおそらく3人が存在しなかったのではなく、ハワードにとって時間・愛・死はまさにこの3人の役者だった。ハワードはそう信じることができたということを表している。

また、この3人の役者それぞれがハワードだけでなく、クレア、サイモン、ホイットの3人に取ってもそれぞれの役が効果を表している。
クレアにとって時間の役者は本当の時間として背中を押してくれた。
サイモンにとって死の役者は自分の病気と向き合い、家族に真実を明かすという最善の方法を見つけさせてくれた。
ホイットにとって愛の役者は愛娘との関係を取り戻すための勇気を与えてくれた。
マデリンが娘を失うとき、死とともに幸せのおまけがあるのを忘れないでという。その一言にマデリンは生きる力をもらう。
そういったのは死の役者のブリジットであった。
人生は全てがリンクしている。
この作品でハワードに語りかける3人の役者の言葉1つ1つがとても深く、考えさせられるものであったのと同時に、ヘレン・ミレン(死)の一言一言がこれまで生きてきた人生で学んできたことを悟っているような演技。
キーラ・ナイトレイ(愛)の感情豊かな優しさそのもののような演技。
ジェイコブ・ラティモア(時間)の少し不思議な感じで一言一言が心に攻撃してくるような冷たくも優しい言葉を発する演技。
映画を見ていて3人が本当の時間・愛・死の化身であるように感じた。
そして何といってもハワードを演じたウィル・スミスの子を思う気持ち、自分への葛藤など顔の表情に非常に魅入られた。

この作品には多くのメッセージ性の高いセリフが出てくる。
その一つ一つがどれも見逃せない、人生の教訓と言える。
中でも幸せのオマケについて
フランケル監督は「我々が日々当然のことのように思っていて気付かないような幸せこそが、前に進む理由になる」と語る。また「例えば、美しい夕日や子供の微笑み、つかの間の宝物のようなもの。” Collateral Beauty(幸せのオマケ)”には、無数の例がありますが、そういった人生の小さくも素晴らしい断片が、生きる価値があると思わせてくれるのです。」と述べているが、
死についてくる幸せのオマケの場合、死を体験し心に傷を負ったものはその分全ての人の苦しみや悲しみも共感し、寄り添えるということではないだろうか。
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