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バッドボーイズ フォー・ライフのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
マイケル・ベイとウィル・スミスをスターダムにお仕上げた『バッド・ボーイズ』の、正当続編シリーズ第3作。
監督はベルギーのアディル・エル・アルビとビラル・ファラーに交代し、かねてより続編製作を熱望していたウィル・スミス自身が製作に名を連ねた作品となりました。

さて、前作『バッドボーイズ2バッド』から17年ものブランクを経て公開された本作では、主役の二人マイク(演:ウィル・スミス)とマーカス(演:マーティン・ローレンス)も相応に歳を取り、自身の肉体的衰えを自覚させられるシーンも入ってきます。
いつまでも、スーパーマンではいられない。生身の人間が演じるからこその、避けがたい現実を、真っ向から受け入れて、それでも抗う姿勢は、大変好印象。
その点を考え始めると必ず頭に浮かぶのが、"老けない男"ことトム・クルーズ。
いい加減彼自身がその身の衰えに向き合うべき段階にあると思うのですが、代表作『ミッション・インポッシブル』シリーズでは相変わらず激しいアクションに挑戦し続けており、個人的には『ジャック・リーチャー』シリーズくらいのアクションに落として、しっとりと、厳かにやってみては?と思ったりします。
もっとも、50後半に遅咲きのアクションスターとなり、60代も終わりを迎えようとしているリーアム・ニーソンみたいな俳優や、2021年9月現在『エクスペンダブルズ』シリーズ続編製作のニュースが次々と提供され界隈を沸かせたシルベスター・スタローンなんかもいらっしゃいますし、別になんの問題もないですけどね。

話がだいぶ逸れましたが、本作では、若い新人にロートルとバカにされたり、体力の低下を感じたりと、勝ち気でやんちゃで輝いていた若い自分から、老いを実感する主人公達が好意的かつ無理のない姿で描かれ、「アクション映画シリーズだからって、いつまでも若々しい肉体派アクションじゃなくてもいいんだ」と考えさせてくれました。中盤までは。


ええ、そうですとも。勿論そんなことで終わるわけありません。最後はきっちり殴り込みをかけ、弾丸飛び交う大乱闘で終止符となります。
そんな中でも、タフガイのマイクが"お前を殴れない"というシチュエーションに追い込まれていたことで、主人公側の肉体的という意味でのアクションが描かれない動機づけとして無理がなく、うまくまとまっていたように思えます。
といっても、身体能力の高さを多少なりアピールしてくれた敵キャラのアルマンドのルックスが、話の流れ的にちょっと無理があるとは思うんですがね……。


マーカスのスタンスは前作から強固にアップデート。
どういうことかというと、
・「引退だ!引退だ!」と言っていただけの前作とは違い、本当に引退状態になってしまうこと
・暴力は振るえない!という考えが「神に誓ったから!」とさらに強いものに
・家族が大事だという姿勢は、孫の誕生で一層マシマシに(まさかのマーカスの娘メーガンの旦那は、前作でマイクとマーカスに散々脅しをかけられていたレジ−青年!しかも、ひょろい兄ちゃんだった前作から一転、米軍兵士になってる!最高だぜ!)
等々、ともかくハッキリ「俺はもう歳だ」という老け込みっぷりです。勿論、最後はきっちり現場最前線に復帰してくるわけですが。
やっぱりこのバディは、マーカスとマイクの性格・特徴・関係性のバランスが絶妙に取れているから、最高なんですよね。
その点キッチリと抑えつつ、長いブランクを味方につけた脚本・演出を用意した製作陣は偉い。

興行収入も予想以上に大健闘したため、ソニー・ピクチャーズは続編企画にGOサインを出しているとのことです。
エンドロールでワンシーン挿入される展開は、最近の潮流として本作でも登場しましたが、明らかに続きそうな引きを残していきましたからね。
『ターミネーター:ジェニシス』みたいな事にならないといいんだけど……大丈夫かしら。
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