ぎー

ノクターナル・アニマルズのぎーのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.5
【第89回アカデミー賞特集2作品目】
"それは愛なのか、復讐なのか"
この映画を見るまで、トム・フォードが映画監督をやっていること自体知らなかった。
流石トム・フォードが監督する作品ということで、とにかくお洒落。
画の質感、画の色味、服装、メイク、全てが洗練されている。
映画冒頭の肥えた裸婦が踊るオープニングで、映画を見る僕らは一瞬で圧倒される。

この映画のピークとなる、ハイウェイでの顛末は怖すぎる。
目下海外の田舎の方への旅行を計画していたが、躊躇するレベル。
圧倒的な暴力、言葉でのコミュニケーションが全く通じない状況、通信がなく警察もいない救いのない環境に対する善良な市民の無力感が凄まじかった。

一方でピークとなるハイウェイの場面を過ぎ、物語が回収へ向かうと、この映画の難解さが壁として立ちはだかる。
一体元夫はどうして原稿を主人公に送ってきたのか。
作中でも殊更に"復讐"というアート作品が示されているから、そういう意図はあるのだろうが、その意図はどこにどういう形で表現されているのか。
現在と過去と小説の物語はどのようにリンクしているのか。
そして、どうしてラストで元夫はレストランへ来なかったのか。
幾つかレビューを見ていても完全に納得感を得るのは難しく、その難解さがお洒落でもあるし、余韻や深みを感じる一方、モヤモヤ感や分かりにくさゆえの満足感の無さをもたらしているのも事実だと思う。
ぎー

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