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ストーンウォールのRのレビュー・感想・評価

ストーンウォール(2015年製作の映画)
4.5
2021年6月コロナ禍中のプライド月間! ということで、これは見とかなきゃダメでしょ、と理由をこじつけ、ずっと見る気が起こらなかった映画を見てみた(嘘)。なぜ見る気が起きなかったかと言うと、評判があまりにも悪いから。LGBTQ+の皆さんからも非難轟々だったのだとか。何が人々の気に入らなかったのか。批判の理由は知らぬまま、たまたまアマプラで見かけて、なんとなく見始めた。それはそれは深い深い批判的懐疑のまなこで見てるもんだから、最初はいろいろ気になってしょうがない、設定全体が過度にステレオティピカルかつジェネリックな感じがして、大雑把やのー、と思いながらも、我慢我慢、と自分を抑えて見ていた。が、だんだん雰囲気に馴染んできて、まぁまぁまぁナシではないかな、って思ってると、ある時点から、いや、これはこれでアリなんじゃないか? むしろ魅力的なのでは?とさえ思えてきた。ボクが本作最大の魅力だと感じたのが、主人公のダニー。この子がとにかくキュート。アメリカの田舎町から突然NYにやってきて、良くも悪くも雑然とした大都会に魅了され、はじめて目にするキャンプなゲイたちにワクワクしてる様子! そのうぶなこと! うぶなこと! 時折り見せるシャイで不器用な笑顔がこれまたラブリーで、気づけばいつしかメロメロに。誰ひとり知り合いのいない彼が、最初に遭遇し、仲良くなっていくのが、ゲイボーイズのひとり、レイ。華奢な体、ウェイビーなロングヘア、鋭い顔立ち、キャンキャン騒がしいおしゃべり、いかにもオネエさん的立ち振る舞い、このクセの強いキャラが、ダニーとはまったく異なる存在感を放つ。(ちなみにボク個人としては、レイにはあまり魅力を感じなかった。) 彼らの関係が、やがて、歴史的ストーンウォールの反乱へとつながっていく……てことなのだが、ストーンウォール自体が本作のクライマックスだと期待を持って見てしまうと、たしかに、事件がファクトに基づいて描かれてるわけじゃないし、大した描写もないので、え、それだけ? え、つまらない、てなるのも理解できる。でも、ボクは、これは、ストーンウォールは背景にあるだけの、友情と愛のストーリーだと思いました。史実を基にはしてるけど、完全なるフィクションだと。そう感じ始めてからは、特に違和感なく、むしろむくむく好感が大きくなっていった。田舎町でゲイがバレてしまって、出て行かなくてはならなくなったダニーの過去……これはよくある設定やけど、それが行き着くエンディングにはかなり心揺さぶられた。特に、彼を病気だと勘当した父との結末。そして、何より、幼少の頃から親友だったジョーとの結末。形容し難い感情が心の底から一気に溢れて、うおおおおおおおおお、と画面の前でうずくまってしまった。で、見終わってよくよく思い返しても、やっぱ本作においてストーンウォールは、タイトルになるほど比重が置かれてなかったよね。てわけで、これから本作を見る方は、是非とも、ストーンウォールの反乱について細かく内容を調べたりせず、なるべく白紙の状態で見ていただきたい。そして、そのあとで気になるなら、調べてみたらいいのではないでしょうか。それで本作が好きでなくなるなら、それはしょうがない。けど、ふつうに娯楽作品として、これはこれでいいやんって人も、かなりの数いるのでは、と思います。ボクがそうだったように。これほどコテンパンに批判されてる作品でも、自分の好みに合うことってあるんやなー、食わず嫌いはあかんなー、としみじみ感じさせられた。よくそういうこと書いてるけど笑 最後に。ジョナサンリースマイヤーズ、久々に見たら、エライごつごつした雰囲気になったなぁ。昔の映画では超美男子やったのに。演技でそう見えてるだけならすごいけど。最後にもうひとつ! エンドロール直前の、ストーリーのその後が字幕で紹介されるとこ、あれがめっちゃめちゃ長くて笑った。ストーンウォール描写の雑さをカバーするためか???笑 と意地悪に考えてしまった。けど、全体としてはかなり好きっすわ。胸に突き刺さるシーンもありつつ、なーんか不器用で、憎めない、カワイイ映画、まさに主人公ダニーみたいな映画。なんじゃないかなー? どうでしょ? ちなみに、この映画は、自分の中にあったマイノリティの可能性を認めることができず、社会の流れに合わせることで正気を保ってきた人びと、まさにこれからそうなろうとしている人々、他者をジャッジすることで自分自身の自由を狭め、苦しんだ人びと、いままさに苦しんでいる人々、自分の人生の自由の幅を限定したくない人びと、そういう方々に特にオススメしたい。というわけで、今年はお祭りに参加する気持ちで、いっちょレインボーな装いでも楽しんでみるか。既に街中でポロポロ見かけるし。
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