140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ルームの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.5
ママに会いたくなりました・・・
※ホームシックを誘発する可能性があります。ご注意ください。

納屋に監禁された母子の物語。
世界を知らなかった少年が世界に触れる。

想像の及ばない体験をした母子
自分は平凡な家庭に不自由なく育ちました。
決して劇中の母子の世界には入り込めません。
しかし、5歳のジャックが初めて見る世界の美しさ・鮮やかさ・そして驚きが、子役のくっきりとした瞳に吸い込まれていく様に感動して涙を流してしまいました。
「インザイドヘッド」を鑑賞したときの、自分の思い出を進行するストーリーの中で同時並行で鑑賞者の頭の中で自身の体験・思い出が駆け巡って行って感情が高揚する仕組みであろうと思います。

思い出しました。
初めて海を見た壮大さ
初めて体感した地震の恐怖
初めて見た青空を遊ぶ2匹のひばり
初めて見た稲光の美しさと怖さ
初めて母と作ったホットケーキの味
初めての幼稚園で母との別れに泣いたあの日
初めて見た母の涙
劇中でジャックがトラックの荷台から見た青空や街並みの何気ないが感動的な描写が突き抜ける音楽とともに心に直接問いかけてきました。

広告宣伝には「お涙頂戴?」と尖った見方をせざるをえない感覚もありましたが、母と子の絆演出がとてもよかったです。

ルームの中で、誕生日ケーキをつくる2人
ルームに疑問のない子と現状打破を強いられる母の苦悩
暖房が止められたルームでジャックが白い息に「ドラゴンみたい」と感動するワンシーンの使い方が巧いです。
そして、母子がルームから脱出するための作戦決行のための練習するシーンをきっちり描いてくれたことがよかったです。
ここに絆とその目的達成のためにほんの少しケイパー要素で味付けされたことで、上記のトラックのシーンまでのテンションの高揚の推進力になりました。
ちなみにジャックが保護された後の、本来映画界では無能キャラとしての立ち位置である警官(婦警さんの方)の有能さがご都合主義ではあるがよかったです。

そして、そして今作が監禁→脱出→母子の絆というところで終わらず。漂流映画の「キャスト・アウェイ」と同じく、その後を描いてくれることも、描いてくれるからこそ、さらに母子の絆の物語が大きく昇華されたと感じました。
失われた時間、世界の広さに戸惑うのは5歳のジャックだけでなく母も同じ、いやそれ以上という展開から、ジャックの世界に触れた感激のモノローグと母子が一時的に離れ離れにならざるを得ない世界の危機がありからこそ、それがラストの成長を示すシーンにつながっていくのです。

安っぽい”感動”というワードではなく、困難と喜びと困難が常に世界の中に内包されていることに今作が発する高揚感があるのだと思います。
母役のブリー・ラーソンの演技力は称賛に値しますし、さらに5歳のジャックの子役の演技以上に存在の素晴らしさに当てられました。子役が良い映画は琴線にくるんですよね。