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メッセージのmazdaのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.1
突如世界中に現れた宇宙船と、見たこともない異生物、彼等が地球に現れた意味、人間に伝えたいメッセージとは何か。
バカウケ型宇宙船?タコ宇宙人?なんだよそれ・・・バカウケ食べれないから絶対はまらないよ・・・というここまでコテコテのSF設定に警戒しながら見始めたスタート。そんなきもちで見てるうえに、主人公が宇宙人と対面する時の緊張と恐怖からきてる息の荒さや聞きなれない雑音のような宇宙人の言語、そして異空間にいるような感覚を与えるバックミュージック。前半は正直気分が悪かった。心地の良さとはかけ離れた音しか耳にはいってこなくて、不快感でいっぱいだった。知りたいという感情よりもここから離れたいと思わせるような不穏感。

しかし最後まで見た時、涙を流さずにはいられなかった。正直ラストまでかけ足になってしまった部分もあったし、ツッコミどころなんて山ほどあるような映画だけどそんなことはとにかくどうでもいい。宇宙人の正体とか生態とか謎のままの要素が少しも気にならないほど、彼等が伝えようたしたメッセージと、そのメッセージを受け取った主人公の最後の選択に、人として美しく素晴らしいと思った。

映画を見たり、誰かと話をしたり、ふとした時に昔のことを無意識に思い出すことはみんなあることだろう。昔に戻ってやり直したいと思うことはなくても、過去のあの瞬間もし別の選択をしていたとしたら、今やこの先はどうなっていたのかなとよく考えてしまう。

何かを選択する瞬間、Aを選択した場合の答えとBを選択した場合の答え、もし手元に答案用紙があったら誰だって自分にとって幸福な方を選ぶはず。ただ幸福というのは、自分が悲しむことも怒ることも傷つくこともない穏やかなことを言うのかというとそれは人によってちがう。Aを選択したからこそ出逢えた人や物があり、学べたことがあるけど、Aを選択したことによって出逢えなくなってしまった人や物があるだろうし、何かに気づけないまま人生を終えることにだってなるかもしれない。

この映画を見ながら、できればなかったことにしたいくらい嫌だったことや悲しいことを思い出してしまった。けれどなかったことにしてしまったら、今の私じゃないんだろう。今の親しい人にだって出逢えないだろうし、私に映画の面白さを教えてくれた人にだって会っていないだろうし、そうなるとそもそも映画が趣味になっていないかもしれない。この映画も見ることはなかったかもしれない。そこまで連想した時急に涙がとまらなくなった。
誰だって辛い思いなんかしたくないだろうけど、その辛さをも上回るほど、出逢えてよかったというきもちが強かったとしたら、辛い選択を選ぶのかもしれない。それは辛いけど、幸福にもなるのかもしれない。

彼女がメッセージを受け取り、そして選択したその先の未来を、この映画を見た人たちはもう知っている。誰かに言わせればその選択は間違いだと思うかもしれないけど、私はもし彼女の立場だったら同じような選択をしただろうと思う。幸せに正解も答えもないんだろう。
本当にこのラストが全てだと思う。宇宙人も宇宙船も私にはこの映画自体が描いたメッセージの素材でしかないと思った。ガチガチの設定でも、この映画か伝えたいメッセージはとてもシンプルなことだと思った。
映画はやっぱり食わず嫌いしちゃダメですね。バカウケは食わず嫌いじゃないけど。
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