円柱野郎

リメンバー・ミーの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

メキシコのとある町。
音楽に憧れながらも、音楽を禁じられた一家に生まれた少年・ミゲルは、ひょんなことで“死者の国”に迷い込んでしまう。

テンポが、美術が、なによりストーリーが素晴らしい。
メキシコの“死者の日”は日本で言うところの“お盆”に近い感覚の様だけど、先祖を敬うという物語には共感しやすい。
“家族”への反発があった主人公が、この物語を通じて大切さを心に刻んでいくという物語も良い。
しかしそれ以上に、話の土台を「音楽を禁じた家族」と設定にすることで、音楽という縦糸が主人公…ひいては家族を繋げていく物語をより強固にドラマチックに仕立てている。
この構成は実に見事だった。
伝記映画も作られたメキシコの芸術家・フリーダ・カーロがちょくちょく出てくるけど、これは知っている前提かな。

「家を出て行ったひいひい爺さん」というキーワードが観客への一つのミスディレクションにもなっているけど、この辺りは少々読める部分もある。
しかし子供も楽しめる物語とすれば絶妙な塩梅だとも思うし、大人目線で言えばその先にあるヘクターの物語で一気に感情をわしづかみにされてしまう感じ。
“Remember me”という、まさにこの物語の主題歌にふさわしい楽曲が心に染みる。

子供は素直に死者の国での冒険物語を楽しめるだろうが、大人が観れば自分の思い出に残る家族の事を重ねながら観ることになるだろう。
この物語が訴える感情は文化を超えて訴える力があると思う。
とてもやさしく素晴らしい、冒険と成長の物語。
円柱野郎

円柱野郎