平野レミゼラブル

葛城事件の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.6
史上最悪の三浦友和が拝める作品。
非常に陰鬱としており、また恐ろしく生々しい家庭内地獄絵図が展開されるので、見ている側の精神と胃を徹底して蝕んでくる。

三浦友和のイメージというと、実生活も役どころとしても結構良き父、良き親父って感じが強かったんですけど本作を見て最悪の方向に塗り潰されてしまった。
本作の三浦友和はというと傍若無人、自己中心、亭主関白、罵詈雑言魔、家庭内暴力上等と「不快さ」で役満を叩き出す振る舞いっぷりを見せつける。
それも身近にこんなヤツいる!という厭に生々しい「不快さ」だ。
その「不快さ」の一端はYouTubeに公式でアップされているので、実際に見ていただいた方が早いだろう。
「三浦友和、地獄のカラオケリサイタル!」とか凄いよね。『三年目の浮気』なんてデュエットなのに一人で歌ってるし、気遣った田中麗奈の「一緒に歌いましょうか?」もガン無視する自分勝手な傍若無人さが現れていて、それでいながら妙に可笑しい。

自分はこの予告編を見て、身近に実際にいるこういう奴を思い出しつつ胸糞が悪くなるとともにこの映画に一発で惹かれてしまった。
あまりにリアルすぎて、気持ち悪いのについついハマってしまう「負のエネルギー」が強すぎるのだ。
例えるならばYah○oニュース記事のコメント欄をついつい覗いてしまうような好奇心。地獄の如き闇がひしめきあってるのは明確なのについつい眺めてしまう地獄の釜の中の魅力。

作中の三浦友和が最悪な人種なのは間違いないが、彼を起因として取り巻く家族も異様な「厭さ」が伝播してるのも凄まじい。
妻は最悪の夫から逃れるために、常に楽な方へと逃避&責任転嫁する思考停止っぷり。
次男は最悪の父から罵倒され、現実を見ない引きこもりの内弁慶から通り魔殺人を起こして死刑囚に。
唯一まともと思われた長男も結局父からの抑圧によって、コミュニケーション不全に陥りリストラされても家族にすら打ち明けない弱さとなってしまっている。
そりゃそうなるよ……という予測可能な「家族という名の地獄」の構築を2時間たっぷりと見せつけてくることに対して本作は徹底している。
田中麗奈演じる死刑反対運動家がそんな地獄へ横入りして空虚さが浮き彫りになっていく構造も絶妙。
最高峰の役者達によって紡がれる丁寧な地獄。最高に最悪である。

この映画を人にオススメするヤツの気は知れないがオススメしたい映画ではある。
どっちだ!

二度と見たくないがオススメ!!