小

LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版の小のレビュー・感想・評価

4.5
むちゃくちゃ良かった。むちゃくちゃ響いた。この作品は押し付けがましくない応援歌。ウルウルした。

映画『ガールズ・ステップ』で見た石井杏奈ちゃんが主演だから、歌ったり踊ったりするのかと思っていたら、良い意味で予想を大いに裏切られた。

(予想を裏切られたい人は、以下はスルーが吉です。)

東日本大震災で被災した、小学校同級生の17~18才の男女4人と、ひょんなことから加わった淡路・阪神大震災の被災者の高校教師が、福島県に向かう。目的は小学校を卒業する際に埋めたタイムカプセルを開けるため。

そこは放射能汚染で立ち入りが制限されている区域。観客は、何とか進入した彼女ら、彼らと一緒に誰もいない瓦礫の街を歩き回り、その凄絶な惨状を目の当たりにする。

それを見て思う。自然は恐ろしいと。我々は都市をつくって、自然から自分達を隔離し、普段は恐怖を忘れているけど、時として襲ってくる自然の猛威の前には無力であることを思いしらされる。

被災した方々にとって震災に終わりはない。物理的に回復したとしても心に負った傷はなくならないから。その傷を自分の一部として飲み込まなければならないから。中には飲み込むことが難しい人もいるだろう。だから、大丈夫、頑張れ、と励ましの言葉を安易にかけるわけにはいかない。

物語は絶望に包まれた日が明け、観客は、再び彼女ら、彼らとともに小学校に向かう。学校でタイムカプセルを開け、自分のことのように共感する。そして思う。この状況を変えるのは人の気持ち、人の意志の力しかないのだと。

過去は戻ってこないけど未来はつくることができる。どんな未来にするかはやはり、人の意志の力次第なのだ。

とても厳しく、過酷なことだけど、今を変えていけるのは生きている人だけだ。我々が最低限やらなければならないこと。それはこうした大災害を、過去を忘れないこと。忘れなければ意志を持つことができるから。

「生きて愛して歌うこと」。嗚呼、こんな駄文を書かなくてもー言で表現されている。

ところで19時始まりの平日の映画館。観客は4人。ちょっともったいない気がした。
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