<これを作らないと自分が一歩も前に進めない、一つも心から笑えない、なんとも生きていけない>。<香織さんの中にある不思議なダンスの力が、わたしのぶちあたっていた囲いを跳び越え、寛容をはぐくみ、違う人や生き物への想像力をくれるじゃん!と元気づけられたのです>。
公式HPの監督のコメントを読んで、観たくなってしまった。一人の人が<作らないわけにはいかなかった>映画とは、一体どんな映画なのだろうか、と。
いざ観てみると、案外静かに、ゆっくりと時の流れる映画。なかなか良いことを言っていると思うものの、刺激少なく、ちょっと退屈なのが残念。
ダンサー・村田香織さんの日常を追い、<選ばれてない、ふつうのわたしとあなたのダンス>を描くドキュメンタリー。コミュニケーションとしてのダンス、普段の生活で幸せになるダンス。
香織さんがショーの演出やダンスのコーチする新江の島水族館、スカイツリーのすみだ水族館。水族館スタッフは、一風変わったダンストレーニングを通じ、お客さんとのコミュニケーションを円滑するヒントを体で感じとる。
ダンスを通じ自分の気持ちを伝え、相手の気持ちを理解する。言葉でなく体で伝え合う。そして、心を開けば体が開く。体を開けば心も開く。ダンスによって笑顔になれる。
香織さんは、週に1日、老いたお母さんの介護に通う。介護が裏テーマであり、監督のこの映画に対する切実な思いにつながるのかもしれない。
認知症が少しずつ進むお母さん。一生懸命話をしても、「できません」「だめです」という返答に、受け止められない気持ちになることも。だからこその「ダンスダンス」。支えたり、抱えたり、食べることを手伝ったり、母と娘の「デュエットダンス」。体の中の耳をすませば、お母さんの声が聞こえてくるのかもしれない。
気持ちがとても辛いとき、体を動かして、心を動かそう。言葉は時に伝わらない。だから体で伝えよう、感じよう。ダンスをしよう。アランの『幸福論』を思い出す、幸せになるための映画。