140字プロレス鶴見辰吾ジラ

日本で一番悪い奴らの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

日本で一番悪い奴ら(2016年製作の映画)
4.7
素直で誠実、何が悪ぃんだバカ野郎!コノ野郎!!ぶっ殺すぞ!!!

嗚呼、これ俺の大好きな”精一杯が届かない”映画だあ…

なんでコイツの努力は方向音痴なんだよお…

日本の警察史上に残る汚点「稲葉事件」に基づくドラマを「凶悪」の白石和彌監督による実録犯罪モノとして描く。

オープニングから小気味良い音楽のヒットから一気に引き込まれる怪しい魅力がある。

タイトルは「日本で一番悪い奴ら」となっていること、主人公の警察官が裏社会に飛び込みのし上がっていく様がコメディックにハイテンポで描かれているがゆえに、想起されるのは「グッドフェローズ」であり「ウルフオブウォールストリート」である。

しかし最後、主人公の成り上がりと没落の末路を見た後に、主人公が語る刑務所面会室ののアクリル越しの本音が、どうしようもなく素直で誠実でありながら、どうしようもなく世間と掛け違いのある努力や野心の方向音痴、精一杯の届かぬ思いであったことに打ち震えてしまった。

途中、舎弟の結婚式のあたりでペース落ちたかと思い、残り上映時間との関係で集中力が低下しましたが、今作の途方もないほど掛け違われた主人公の素直さ、誠実さが全編通してのテンションであるオーバーでコメディックな作りに対してのあまりに強烈なカウンターブローとして心を抉ってくれた。

本当に最高で最高で…
主人公の”精一杯”の届かなさ
主人公の”精一杯”の裏切られる様
主人公の”帰ってこない”あの日の青春
にホントはアイツらにはハッピーエンディングを迎えて欲しかった感が虚ろなアクリル越しの表情に掻き立てられた。

仕事で部下に求めることとして
”素直さ”や”誠実さ”を上げられますが、主人公は根っからの悪でなく、単に素直で誠実がゆえに先輩社員の悪魔の囁きを本当の本当に忠実にやり抜いた結果から生まれくる成長であり成功であり、没落であるがゆえのどうにもならなさが良い。本来、ヤクザの世界に飛び込んだり、泳がせ捜査をする場合に善と悪の狭間で揺れ動く演出があって然るモノがあるが、裏社会に躊躇なくアクセルを踏み込んで名刺を配りまくるある種の狂ったような誠実さに惹かれてしまった。中村獅童演じるヤクザとの暴言のフリースタイルバトル的なシーン含め、コメディックでありながら最高に楽しいですし、ススキノの道を成り上がって闊歩するシーン、ヤクザとラーメン食べるシーン、逮捕祝いに写真撮影するシーンに「頑張れよ!」と声を掛けたくなる感じが素晴らしい。

130分のランタイムの中、隙間を埋めに埋めるのはセックス、ドラッグ、バイオレンス。デニス植野のシリアスとコメディの狭間の絶妙なラインのパキスタン人演技が心地良い。語彙レベルの低いコノ野郎バカ野郎語録から野生的、娯楽的なセックスの挑戦的で挑発的な描写のアクセルの踏み込み方に今までの邦画に物足りないと思っていたことが埋め合わせに使われていたのは心が弾んだ部分である。

個人的な琴線に触れたので傑作であると思う。



和製スーサイドスクワッド
菅田将暉(ピンクとグレー)
松岡茉優(ちはやふる)
森田剛(ヒメアノ〜ル)
柳楽優弥(ディストラクションベイビーズ)
香川照之(クリーピー)
綾野剛(日本で一番悪い奴ら)←NEW
と集結しつつある。